SMILE!
10
「……また…どっか行かれたら困る」
「…い、行かないから…降ろしてくれ、頼む」
必死に頼むと五十嵐は頷いて、おれを降ろしてくれた。はあ、とため息をつくと五十嵐が頭を撫でてきた。
「…あ、」
赤塚に指輪返してない。
「……どうした…?」
「…指輪、」
握り締めていた指輪を五十嵐に見せる。
「……生徒会の、指輪」
「…たぶん赤塚が、落としたんだと」
どうすればいいんだろうか?
隠岐に渡す?でも、それは違う気がする。
「……晃雅…望んでない」
「…え?」
望んでないって。隠岐は生徒会の指輪も風紀の指輪もいらないのか?まあ、確かに黒川がいれば、必要ないものかもしれない。
「……だから、八の好きにすればいい」
好きにすればいいって言われても、逆に困るんだが。
出来れば、生徒会に返したい。
「……たんこぶ…」
さっきからおれの頭を撫でている五十嵐の手が、ベンチにぶつけて出来たたんこぶに触れた。
「…さっき、ぶつけて」
「……痛い…?」
少し痛かったので、コクンと頷いた。そして何を思ったのか五十嵐は、たんこぶが出来ている辺りに口づけた。
「…っい、い五十嵐…!」
「……ん?」
何もなかったようにおれを見下ろす五十嵐。……なんか、気にするだけ無駄な感じがする。
というか、こんな事してる場合じゃない。
指輪、返さないと。赤塚に返した方がいいんだろうけど…あんまり会いたくない。
赤塚が嫌いな訳じゃない。あの赤塚の性格とどう接すればいいか分からない……苦手なんだ。
だから、出来れば…加賀谷に返したいんだが。
「…五十嵐、」
「……ん…」
「…指輪、返しに…行っても、いいか?」
「……今日はダメ」
今日はダメって…明日だったらいいのか?でも、赤塚が指輪ない事に気付いたら大変な事になりそうだな。
「…赤塚、困らない、か?」
「……知らない」
五十嵐、赤塚の事嫌いってさっき言ってたもんな。
じゃあどうしようか…
今日返すのは無理そうだから、明日返しに行こう。それなら大丈夫だろう、たぶん
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