SMILE!
9
おれのはちゃんとあるし、色違いだし。もしかしてこれ…赤塚の?
さっきおれを押した時にポケットから飛び出したんだろうか?手に取ってまじまじと指輪を見つめる。赤塚に返した方がいいよな。
そう思って赤塚を見上げたが、赤塚は紅支持の生徒と睨み合い。
話し掛けても、また遮られる可能性がある。
それに、おれは赤塚に嫌われてしまったかもしれない。
最低だと、言われてしまったし。赤塚の言葉がぐるぐる頭を回る。
「な、何だ!お前!!」
赤塚のその声で、我に帰り周りを見渡すと、
「……いが、らし…」
無表情の五十嵐がいた。
紅支持の生徒も呆然と五十嵐を見ていた。五十嵐は赤塚や紅支持の生徒には目もくれず、真っ直ぐおれの所に来た。
「……もう、15分」
そんなに経ってたのか。
3分の約束だったのに。
「…悪い」
「……行こ、」
「なぁ!お前、誰なんだ?」
赤塚に遮られ、無表情の五十嵐が少し眉をひそめた。
「オレ赤塚風大っていうんだ。アンタ名前は?」
五十嵐の腕を掴みながら、そう言う赤塚。五十嵐は赤塚の手を振り払う。
「……触るな」
「ちょっとくらいいいだろ!」
「……イヤ」
赤塚は五十嵐に何を言われても引かず、突っ掛かっている。
「何でだよ!」
「……お前、嫌い」
五十嵐はおれを軽々と抱き上げて、歩き始めた。
「ちょ、おい待てよ!!」
「……うざい」
おれにしか聞こえない声でそう呟いた五十嵐。まさか五十嵐がそんな事を言うなんて思わなくて思わず五十嵐の顔を凝視してしまう。
「………」
五十嵐は紅支持の生徒と目を合わせ、無言で指示をした。その瞬間、一人の生徒が赤塚の腕を掴む。
「何すんだ!離せ!」
「まだ話終わってねぇんだよ、赤塚風大!」
またしても、言い合いを始める赤塚。それを尻目に五十嵐は歩き出した。赤塚はおれ達に気付いていないようだった。
赤塚達が見えなくなり、やっと五十嵐は足を止めた。
「…あ、の…五十嵐…降ろして、くれない、か?」
「……ダメ、」
「…な、んで」
高校一年生に抱き上げられている24歳のおれ。
恥ずかしくて死にそうだ。
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