SMILE!
8
耳元で叫ばれ、ズキンと頭が痛んだ。赤塚から視線を外し、思わず頭を押さえた。赤塚はそれも気にくわなかったらしく、また大きな声で叫んだ。
うるさい。頼むから…、静かにしてくれ…
「なあ!江夏さん!!聞いてんのかよ!」
そんなに叫ばなくても、聞こえるから…
うるさいのは嫌いだ。
騒がしいのは嫌いだ。
…思い出して、しまうから
「江夏さ―」
「おいっ!赤塚がいるぞ!!」
赤塚がまた叫ぼうとした時、数人の生徒がやって来て、おれと赤塚の周りを取り囲んだ。
「何だ!お前ら!!」
「お前指輪持ってんだろ、寄越せよ」
赤塚を狙っているという事は、紅支持者だろう。頭が痛くて、赤塚達をぼーっと傍観していると紅支持者の生徒一人と目が合った。
そいつはニヤリと笑った。
「ちょうどいいし、そこの用務員もやろうぜ。だいたいオレらはお前が担当だって事、認めてねぇし。マジ邪魔」
ああ、やっぱりおれが担当だとは認めてはくれないのか。
ズキズキと痛む頭を無視して、ベンチから立ち上がる。前には、赤塚が立っていて、何やら言い合いをしている。
「誰がお前らなんかに渡すか!紅っていう最低な奴らの仲間なんだろ!」
赤塚は、紅の皆に会った事あるんだろうか?紅が、最低だといつ誰が、決めたんだ…?
おれも、まだよくは知らないけど、あの五人は優しい。
「……最低じゃ、ない」
赤塚の後ろから、そう呟くと赤塚は驚いた目でこっちを見て、また叫んだ。
「江夏さんも、あいつらの仲間なのかよ!」
「…違、」
違う、そうじゃないと言おうとした。けれど、やっぱり遮られた。
「最低だッ!!」
ドンッと赤塚に身体を押された。思っていた以上に力が強く、おれの身体は簡単に傾いた。
「…っぃ、」
ガツンと真後ろにあったベンチに頭を強打した。頭の痛みが三割増した。赤塚がまた叫んでいたが、聞こえなかったし、聞こうとしなかった。
…あまりの頭の痛さに。
立つ気力もなく地面に座ったまま、ぶつけた部分を手で摩る。
…たんこぶ
地面とにらめっこしていると、キラリと光る何かが落ちていて、それを手に取る。
それは指輪だった。俺が隠岐から預けられたものと色違いの指輪。
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