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SMILE!
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「風大すみません、しばらくここで待ってて下さい」


岩代は携帯電話を取り出して、唐突にそう言った。


「何か、あったのか?」

「いえ、そういう訳ではありません。ただちょっとありまして。待っててくれますか?」

「ああ、わかった!江夏さんと待ってるから早く帰って来いよ!」


…え?待ってくれ、おれは五十嵐の所に戻らないと。もう3分過ぎてるだろうし…
赤塚と一緒に待つのは遠慮したいんだが。
岩代は赤塚と二言ほど話すと加賀谷が去った方と同じ方向に去っていった。


「……あ、の…赤塚、」

「何だ?」

「…おれ、も…ちょっと用事が」

「ダメ!」


…何故だ。


「江夏さんってここにいる事が仕事なんですよね!だから動いちゃダメ!」


いや、だから…それは赤塚の勘違いなんだが、聞いてくれそうにない。


「オレが一緒にいますから!江夏さん、一人で寂しかったんですよね!」


…誰か、赤塚をどうにかして下さい。


「江夏さんってここに座ってるだけってヒマじゃないですか?」


いや、暇じゃない。ここに座ったのも初めてだ。


「………」

「あの!何で無視するんですか!さっきから、喋ってんのオレばっかりですよ!」


無視してるつもりなんてない。
ただ、赤塚みたいな子は初めてで、どう接していいか…分からないだけだ。もともと話すのは得意じゃないし。どちらかと言えば苦手な方。
それでも、今まで出会った…良仁さんや桐也先生、真樹先生、鈴は、おれの話をちゃんと最後まで聞いてくれる。
だから、赤塚にどう対応していいかが、分からないんだ。話を遮られるくらいなら、何も話さない方がいいんじゃないか、とそう思ってしまった。

自分を変えたいのに、こんな事じゃ変えられない。
きっと、赤塚が話を遮ってしまうのは、おれの話し方が悪いせいだと自分自身に言い聞かせた。


「何か言えよ!!」


大きな声を出す赤塚に驚き、ビクリと肩を震わせる。


「人を無視するのはいけないって習っただろ!そんな事も分からないのかよ!!」

「……っ、」


止めてくれ。叫ぶな。
…無視、なんてしてない。
何で、分かってくれないんだ…



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