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SMILE!
6



加賀谷の言葉の意味を考えていた。紅と対立しなければいけない理由があるのか?
おれはまだ、何か知らない事があるんじゃないだろうか。


「江夏さん!」


目の前から、声が聞こえて顔をあげると間近に赤塚がいた。
赤塚はニコニコと笑っていた。何か嬉しい事でもあったんだろうかと思うくらいの笑顔。


「風大、それと知り合いなんですか?」

「ああ、この前親衛隊から逃がしてくれた人!」


赤塚がそう言うと、黒髪の生徒はじろりとこっちを見た。おれを一瞥するとすぐに赤塚に視線を戻した。
でも、その瞳に赤塚は映っていないような気がした。


「江夏さんこの人は日向先輩だ」


ひゅうが?
苗字か名前か分からない。


「生徒会副会長の岩代日向です」


冷たく言い放つ。
副会長、加賀谷とはだいぶ違う。


「江夏さんは何してたんだ?」

「……、」


何て答えようか…仕事?散歩?
事実、さっきまで仕事をしていたし…仕事と赤塚に答えた。


「え、でも仕事してないじゃん。江夏さんって座っとく事が仕事なの?」

「………」


そんなわけないだろう。なにしてたんだって聞いてきたから、仕事だと言った。今の事を話しているわけではない。
思考回路が幼稚園児以下
加賀谷のその言葉が少し分かるような気がした。
まともな話しができない。


「その顔の傷、どうしたんだ?」


おれの仕事の話はどうでもいいらしく、今度は傷の話になった。
この前親衛隊から赤塚を助けた時に怪我したんだと…言った方がいいんだろうか。
このまま黙っておくのも駄目なんじゃないかと思い、口を開いた。


「……この、前、」


が、赤塚の声に阻まれた。


「あ!わかった!江夏さんってドジだから、転んだんですよね?」

「……、」


転んで顔を怪我するなんて事は滅多にないと思うんだが。
それに三回、今日で四回目だ、赤塚に会ったのは。たったそれだけなのに、赤塚はおれのどこがドジだと思ったんだろう。


「…ドジ、じゃな」

「いや、江夏さんはドジだ!」


また、遮られた。
…おれの話し方が悪いのか?


「だって、江夏さんオレと会う時絶対ぶつかるし。ま、今日はぶつかんなかったけど」


それは、おれが悪い、のか?
一回目は水やりに行く途中にぶつかり、二回目は花の植え替え中に、三回目は散歩中だった。
ぶつかる度に赤塚は謝ってくれていた。おれも謝った方が、よかったんだろうか。

でも、よく考えたら、全て赤塚が後ろからぶつかってきていて、おれは避けようがない。



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