SMILE!
2
「うわぁー、はちゅの顔が酷い事になってるー」
木野の後ろから、隠岐達の待つ教室に入ると青柳が近づいて来て、絆創膏を貼っているおれの頬を突いた。
「……い、たい…」
青柳が触る度にピリピリとした痛みが走る。
「あ、ごめーん」
傘を振り回しながら謝る青柳。その傘が当たりそうで怖い。
「美涼」
隠岐が青柳に向かって、キラリと光る何かを投げた。それを受け取った青柳は、おれの後ろに回り込んだ。
「とりあえず、無くさないようにしてねー?というか、取られないようにねー」
首にひんやりとした感触がして、何だと首を見てみたら、チェーンに指輪がついたシンプルなネックレスがつけられていた。
これって、鍵の人が持つっていうやつ、じゃないのか…
「服の中に隠してていいからー」
他の人に見られないようにと、青柳はネックレスを服の内側に隠した。
「馬鹿犬、絶対に取られるんじゃねえぞ。お前が鍵だと知っているのは俺達五人だけだ。他の奴らは俺が鍵だと思っているからな」
おれが鍵なんて誰も思わないだろうな。でも、本当におれなんかが鍵という大役で大丈夫なんだろうか…
「ちなみに風紀の鍵は前回と同じく委員長で、生徒会は赤塚風大だよ」
…は?赤塚?何であの子が。
黒川は楽しそうにパソコンを操作しながら言った。
「副会長辺りが勝手に決めたらしいよ。それに馬鹿な赤塚風大は、食堂で俺、鍵なんだって発言をして全校生徒にばれちゃったんだよね」
あの子が鍵…
バレたのなら鍵になる人を変えればよくないか?やっぱり、この歓迎会のルールがよくわからない。
「ま、はっちんはいつも通りにしてればいいよ」
「……わ、かった」
「宰、」
隠岐は、窓の外をボーッと見ていた五十嵐に声をかけた。
「馬鹿犬と一緒にいろ」
「……ん、了解」
五十嵐は窓から離れ、おれの隣に来た。
おれと一緒?今日一日ずっと?なんか申し訳ない。
「大丈夫だよん。宰はー、こう見えても晃雅の次に強いからー、安心してねー」
意外だ。いつもボーッとしてそうなのに。
そんな事を考えていると、放送が流れた。
《皆おはよー!香西杏でーす。今から10分後に開始するからね。頑張って紅の鍵奪ってねー!!》
ブツッと放送が切れた。
「ふざけた事言いやがるな」
フッと妖しく隠岐は笑った。
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