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SMILE!
2



「絶対ですよ」

「……ああ」


鈴はガーゼやら絆創膏が、貼ってある頬をゆっくりと撫でると、おれから離れた。


「明日の水やりは俺がやりますから、八さんは安心して寝てて下さい」

「……いや、でも」


それはおれの仕事だから、鈴にやらせる訳にはいかない。


「大丈夫ですよ。それに明日は雨らしいですから、水やりは温室だけですよ」

「……、」

「八さん、こういう時くらい、頼ってください」


頼る、か…
いいだろうか、ちょっと…ほんのちょっとだけ頼っても。


「……いい、のか…?」

「八さんの頼みなら喜んでしますよ」

「……鈴…頼んでも、いいか?」

「はい、分かりました」


鈴は嬉しそうに微笑んだ。


「じゃあ、俺そろそろ帰りますね。風紀の仕事もありますから」


名残惜しそうに扉に向かう鈴。


「……あ、鈴、」

「はい?」


振り向いた鈴に、一言


「……ありがとう」

「…っ、どういたしまして」


鈴の顔がちょっとだけ赤い気がした。もう帰ってしまったから、確認は出来ないけど。





―side.依鈴



本当はもっと聞きたい事があった。赤塚とはいつ知り合ったんだとか。何故、赤塚を助けたんだとか、いろいろ。
八さんの性格上、赤塚を助けたのは仕方ない事かもしれない。あの人は優しすぎるから、赤塚をほっとけなかったんだろう。
だからって、自分を犠牲にしてまで、赤塚を助けて欲しくはなかった。
隙をみて、二人で逃げる事だって出来たはずなのに。
赤塚は逃げて来たあと、呑気に生徒会室で話していた。
そしてしばらくして、思い出したかのように親衛隊に襲われそうになったとそう言った。赤塚は、助けさえも呼ばなかった。
赤塚が助けを呼んでいたなら、八さんはあそこまで傷つかなかったかもしれないのに。

俺は完璧に赤塚風太という人間が嫌いになった。
紅の隠岐晃雅が、八さんを助けたという事にも、イラついた。
金武に守ると言ったのに、俺は八さんを守る事も助ける事も出来なかった。


「…っくそ…!」


どうすれば、あの人を守れる?
二度と、傷付かせないように。必ずあの人は俺が守る。



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