SMILE! 2 「そんなの関係ないんだよ!杏ちゃんに近づく奴は許さない」 親衛隊の数は六人。 そのうちの一人が近づき赤塚の腕を掴んだ。 黒川の言葉が頭をぐるぐる回る。 はっちんはさ、そういう生徒がいたら…どうする? 親衛隊にイジメられている生徒がいたら、おれはどうする? あの時は答えられなかった。そんな状況に合うなんて思ってもみなかった。 ただの用務員に期待しちゃダメだね そうだ、おれはただの用務員で、この学園の生徒でも、教師でもない。期待されても、それに応えるような力も能力もない。 だけど、目の前で困ってる人を見捨てるほど、おれは最悪な人間じゃ、ない。 今、行動しなければ駄目なんだ。 「………や、めろ」 赤塚の腕を掴んでいた生徒の腕を掴む。 「江夏さん!?」 「はぁ?もやしが何の用だよ」 おれに気を取られたのか、赤塚から手を離した。 赤塚を後ろに隠す。 「どけよ、邪魔なんだよ」 どうにかして赤塚だけでも逃がしたかった。幸い赤塚は親衛隊から離れているし、おれが何とかすれば逃げれるはずだ。 「おい、早くしろよ」 「分かってるっつーの!」 親衛隊が何やら、揉め始めた。赤塚に小声で話しかける。 「……に、げろ」 「え?」 後ろにいる赤塚を振り返り、軽く肩を押す。今なら、赤塚だけなら逃げれる。赤塚は小さいし、大丈夫だろう。 「…早く、行け」 「えっ、でも!」 叫ぶな、親衛隊に気付かれる。 「…早く」 今度は強めに肩を押す。 赤塚は顔を歪め、親衛隊とは逆の方向に走り出した。足は速いらしく、赤塚の後ろ姿はどんどん小さくなっていった。 「おい!赤塚逃げてんぞ!!」 その叫び声で一斉に、こっちを向く。赤塚はもう遠くまで逃げていた。 「おい、もやし、覚悟出来てんだろうなぁ?」 「……、」 六人に囲まれた。 もう、逃げれない。 「気持ちワリィんだよ!!」 ドスッとおもいっきり、お腹を蹴られた。隠岐に蹴られた時以上の痛み。隠岐はあの時、手加減してくれたんだと、今知った。 . [まえ][つぎ] [戻る] |