SMILE! おにぎり 鈴達と別れた後は、家に帰った。シマは散歩に行っているのか、いなかった。シマに癒してもらおうと思ってたのに。 「…疲れた」 ベッドに腰掛け、いつも着ているつなぎの服を腰まで脱いでつなぎの下に着ていたTシャツを捲る。 案の定、隠岐に蹴られたお腹が青くなっていた。レンガにぶつけたスネも同じように青い。 でももうそんなに痛くないし、大丈夫だろう。 ベッドから立ち上がって、キッチンに向かう。 何か料理を作る気にもならなかったから、おにぎりを作る事に。ちょっと大きめのおにぎりを一つだけ作ってもぐもぐと食べる。 「八、いるかー?」 ガチャとノックもせずに入ってきたのは桐也先生。 「…お前さ、ちゃんと服着ろよ」 勝手に入って来て、最初に言う言葉がそれか。 服ならちゃんと着てる。つなぎは腰まで脱いでるけど。 「そのおにぎり、八が作ったのか?」 バタンと扉を閉め、桐也先生はおれのすぐ隣に立った。 コクンと頷くと桐也先生はニヤリと笑って、おれの手首を取った。 必然的に手に持っているおにぎりも桐也先生の方へ向かう。 …あと、一口なのに、 「八、お前…腕細すぎ。ちゃんと食ってんのか?」 「……食べて、ます」 だから、早く手を離して下さい。Tシャツでいるんじゃなかった。しかも半袖だから、寒くなってきた。 桐也先生は立っているから、おれは見上げる形になる。残ったおにぎりをじっと見ていると、何を思ったのか桐也先生は、おれの手を口まで持っていき、パクリと一口残ったおにぎりを食べた。 そして、ペロッと指まで舐められた。 「…っ…何、してん、だ」 敬語が崩れたのは許してほしい。手首を離してもらいたいが、力が強いから離れない。 「何って、おにぎりつまみ食い。いや、オレもさあ、真樹とか半木に負けてらんないだろ?」 何で急に、真樹先生と鈴が出てくるんだ…?負けられないって何? 疑問ばかり浮かぶ。 「つーか、そんな話をしにここ来た訳じゃねぇよ。紅の事を聞きに来たんだよ」 やっと手首から手を離してくれた。脱いでいたつなぎを着る。 桐也先生はおれの向かいのイスに座った。 . [まえ][つぎ] [戻る] |