SMILE!
鈴と双子
「……よいしょ……っい」
枯れた花の植え替えも水やりも終わり、カゴを持って立ち上がる。隠岐に蹴られたお腹と、レンガにぶつけたスネが痛かった。たぶん、痣になるだろう。
使った道具をしまうために、温室の隣の倉庫へ向かう。温室の前を通ろとした時、知った声が聞こえた。
「何でお前ら、いるんだよ!」
鈴の声、
誰かと話しているみたいだった。ちらりと見ると、やっぱり鈴がいた。それと鈴の他に二人いた。
誰だろう……?
鈴を含めた三人は温室の前で話しているため、必然的にそこを通らなければならないわけで、鈴はおれに気づいた。
が、目を反らされた。
いつもだったら、鈴から話しかけてくれる。おれが気づかないうちに何かしてしまったのか?
ちょっとしょんぼりとして、温室の前を通り過ぎる。
「…あ、八さん!!」
鈴の声に振り向くと、鈴はばつが悪そうな顔をしていた。
「……鈴」
「…すみません。無視して」
首を振り、気にしてない事を伝える。いや、本当はちょっと気になってるけど。
「依鈴、その人、」
「「誰?」」
鈴の後ろから二人が近づいて来た。片方は赤い眼鏡をかけていた。二人とも雰囲気が似ている気がした。
「お前らは少し黙ってろ。……えっと、八さんこの二人は風紀委員で、」
「滝矢咲でーす」
「滝矢菊です」
えっと、眼鏡の方が…さく?でもう一人がきく?でいいんだよな?
滝矢咲の方は金髪に近い茶髪で、滝矢菊の方は焦げ茶色の髪をしていた。
「お前ら…」
鈴は眉間にシワを寄せて、ため息をついた。
「ちなみに双子でーす」
滝矢咲は、ピースしながらそう言った。ああ、双子だから雰囲気が似ているのか。
「依鈴、この人名前は?」
滝矢菊が鈴に聞く。
鈴はちょっと嫌な顔をしていたが、もう一度ため息をつくと話し始めた。
「江夏八さん。この学園の用務員で花の世話をしてるんだ」
鈴の説明と一緒におれは二人に向かって、ペこりと頭を下げた。
「へぇー」
「ほー」
「「ふーん」」
二人して顔を見合わせ、ニヤニヤと妖しく笑っていた。
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