SMILE!
4
「お前が紅の担当だ」
漆黒の瞳と目が合う。吸い込まれそうだ。
「ただし、余計な事は一切するんじゃねえぞ。俺の邪魔をした場合、即刻切る。それだけは覚えておけ」
じゃあ、今までの紅の担当は、余計な事をしたから、辞めさせられたのだろうか。
おれは、どうするだろう…
「返事は」
「……っ痛い…」
床についていた手を軽く踏まれた。おれの後ろでは、青柳がケラケラと傘を回しながら笑っている。
「返事は?」
「……はい」
踏まれて赤くなった手をさする。
この人を怒らせたらダメだ。蹴られるし、踏まれる。
「俺は隠岐晃雅だ。紅のリーダーだな、一応」
銀髪で漆黒の瞳。
風になびく髪が綺麗だ。
「おれももう一回言っとくねー。青柳美涼だよー。おれと晃雅は三年せー。よろしく、はちゅ」
ニッコリ笑いかけてくる青柳に、戸惑いながらもコクンと頷く。
「黒川千里、二年だよ。趣味は情報収集。よろしく、はっちん」
パソコンから顔を上げ、微笑まれた。結んだ前髪がぴょんぴょんと跳ねている。
今度は不良っぽい生徒がおれを見る。
「木野深雪、二年」
「はちゅ、ゆっきぃって呼んであげてねー」
「…絶対、呼ぶなよ」
ドスのきいた声で言われて、絶対呼ばない事を誓った。
最後に残ったのは、さっきから外を眺めている生徒。
身長が高くて、たぶん真樹先生くらいある。
「つっくんの番だよ」
黒川が言うと、ゆっくりとこっちを向いた。綺麗な青い瞳をしていた。肩まである黒い髪を後ろで緩く結んでいる。
「……五十嵐…宰…一年」
五十嵐宰と名乗った生徒はおれよりも無口で無表情だった。
ひとつ疑問に思った。
余計な事はするな。と言うなら、おれは何をすればいい?何もしないというのは、ダメだろう。
「………あの、」
相手の方が明らかに年下なのに、畏まってしまうのは相手の……隠岐晃雅の威圧感がすごいから。
「なんだ」
「……お、おれは…何をすれば、いい…?」
隠岐の眉間にシワがよった。
あ、怒らせた、かもしれない…。
「馬鹿犬、お前、人の話もろくに聞けないようだな」
「……痛い…」
また、踏まれた。今度は足を。
「お前は何もしなくていい」
「そうだよー、はちゅは何もしなくていいの。今までの担当は馬鹿だから、紅の情報を生徒会にリークしたんだよー」
本当馬鹿だよねぇ、とクスクス笑う青柳。目だけは笑っていなかった。
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