SMILE! 2 「はい、とうちゃーく」 最上階の四階まで、傘で引っ張られて連れてこられた。 青柳は何の躊躇いもなく、目の前の扉を開けた。普通の教室の様になっていると思っていたが、違った。 大きな黒いソファーが置いてあり、そこに誰か座っているようだったが、青柳の後ろにいるため顔は見えなかった。 この部屋には、青柳を含め五人の生徒がいた。 「みぃちゃん、遅かったね。今日担当来る日だよ?」 青柳に話し掛けたのは、茶髪で前髪だけを結んでいる小さい子。 床に座っているその子の膝上にはノートパソコンが乗っていた。 「ごめーん。それより晃雅、はいこれお土産」 傘を外され、背中を押されて青柳の前に出る。 「…何だ、コイツは」 「……あ、」 おれの前、ソファーで偉そうに脚を組んで座っていたのは、あの銀色の髪の生徒だった。 相手も気付いたのか、眉間にシワを寄せておれをジロリと見た。 「晃雅ー、これ担当だってー」 「ああ?コイツがか?」 「そうなんだよねー?はちゅ」 青柳にそう問われ、頷く。 銀髪の生徒はソファーから立ち上がって、おれに近づいた。 「……っい゛…」 目の前まで来た銀髪の生徒はいきなり、おれの腹を蹴った。 こういう痛みに慣れていないおれは、腹を抑えて床に膝をついた。 「お前、教師じゃねえって言ったよなあ?」 「……っぅ…」 嘘ついたと思われてる。 疑われるのは仕方ない。だって、おれは用務員で。用務員が担当になるなんてありえない事なんだ。 「黙ってんじゃねえよ。また、蹴られたいのか?」 ここにおれを助けてくれる人は、誰もいない。 青柳は楽しそうに笑っていて、小さい子はパソコンを真剣に見つめていた。 あとの二人は… この中で1番不良っぽい奴は、じっとこっちを見ていた。もう一人は、窓際に立って欠伸をしながら外を眺めている。 これはおれの仕事だ。おれが、おれ自身が何とかしないと。 「……お、れは……教師、じゃない」 「じゃあ、はちゅは何者ー?」 何者って、おれはただの用務員で、いつもは花を相手にしてます。 「みぃちゃん、それ名前何?」 それとはおれの事だろう。現に小さい子に指をさされている。 「えーっと、何だっけー?」 さっき教えたのに、もう忘れたのか…? . [まえ][つぎ] [戻る] |