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SMILE!




目の前には、紅がいるという棟。入らなければならないが、入りづらい。
しかも、あんまり眠れなかったせいで、眠い。


「……入る、か…」


意を決して、中に入る。
中は、人、人、人…そして、うるさい。
あまりのうるささに顔をしかめていると、一人の生徒がおれに気づいて近づいて来た。


「てめぇ、誰だ」


睨みつけられ、ちょっとだけ後ずさる。


「おい、聞いてんのかよ!」


ドンッと肩を押されて、壁に肩をぶつけた。
顔を上げ周りを見渡すと、いつの間にか、数人の生徒に囲まれていた。


「お前さぁ、ここどこか分かって入って来てんの?」

「……、」


何も言えずに黙っていると、ダンッと壁に身体を押し付けられた。ジンジンと背中が、痛む。
こんなに人が多い所に来たのは、中学生以来かもしれない。
昨日の入学式は、うるさいだけだったけど、今日は違う。
人が、近い。


「何とか、言えよっ!!」


目の前にいる生徒が、手を振り上げた。殴られると思ったおれはぎゅっと目を閉じた。


「なぁに、してんのー?」


間延びした声が聞こえて、目を開けると、青い髪の生徒がコウモリ傘片手に立っていた。


「青柳…」


青柳と呼ばれた生徒は、ニコニコ笑っていて掴み所がない奴だと思った。それにその手に持っているコウモリ傘は、何の意味があるんだろうか。
名前も青で、髪も青。そして、コウモリ傘。


「とりあえず、お前らはどっか行ってくれないかなあ?」


青柳の言葉でおれを囲んでいた奴らは、去っていった。


「で、君は誰ですかー?」


近づいて来た青柳に傘で肩をトンと軽く叩かれた。
青柳はおれよりも5pくらい背が高かった。


「黙ってたら分からないでしょ」

「……おれ…担、当で…」


頑張って話したら、相手は顔を歪めた。
おれ、何かしただろうか…


「君が?本当にー?」


コクンと頷くと、ああそうと不機嫌な声が帰って来た。


「名前なぁに?」

「……江夏、八…」

「おれは青柳美涼。とりあえず、はちゅついて来てねー」


この青柳美涼という人物は悪い人ではなさそうだ。


「……は、ちゅ…?」

「君のあだ名だよ。可愛いでしょー?」


可愛い?あだ名をつけられた。
もやしと言われるのに慣れているので、なんだか新鮮だった。


「はちゅ、早くー」

「……っぅわ…!」


青柳は傘の取っ手をおれの襟元に引っ掛けてそのまま歩き出した。


「傘って便利だよねー」


いや、傘の使い方間違ってるだろう。



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