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SMILE!
入学式



ついに来てしまった入学式。
いつもの作業着で入学式が行われる体育館に向かう。
水やりは入学式が終わってからしよう。まだ時間は早いから生徒は誰一人いない。


「おい、八!」


体育館の方から桐也先生が歩いて来た。


「…桐也先生、おはようございます」

「はよ。ちゃんと来たな」

「…だって、仕事」

「よし、偉い偉い」


わしゃわしゃと頭を撫でられる。
本当、何歳だと思われてるんだろう?そんなに歳変わらないのに。


「理事長、もう来てるぞ」

「……え?」

「お前待ちだ」


桐也先生に促され体育館に入る。
理事長と会うの久しぶりだ。最近は忙しそうだったし、会うのが楽しみだ。


「理事長、八連れて来ましたよ」

「八君、久しぶりだね」


久しぶりに見た理事長は、いつも通り優しい笑顔で安心した。
理事長は30代前半で。なのに凄く若く見えるし、この歳で理事長を勤めていて、尊敬する。
もちろん、生徒にも人気だ。


「…理事長、久しぶりです」

「理事長だなんて他人行儀だなぁ。八君らしいけどね。良仁でいいって言っただろう」

「…良仁さん…?」


ぎこちなく名前を呼ぶと、理事長…良仁さんはニッコリ笑った。


「八君、入学式来るの嫌だっただろう?」

「……そんな事、ない…です」


本当はすごく嫌だった。人が多いのは嫌いだから。
でも、仕事だし…それに良仁さんのお願いなら、仕方ない。


「来てくれてありがとう。八君、無理はしなくていいからね。気分が悪くなったら、出ていっていいから。分かったね?」

「……はい」


良仁さんは、おれの全部を知ってるから、気遣ってくれるし、心配してくれる。
だからこそ、おれを成長させようとしてくれている。生きていくのに人が苦手なんて言ってられないんだ。


「……良仁さん、すみません」


おれはこの人に迷惑ばっかりかけている。謝っても何も返す事は出来ないけど、今のおれには謝る事しか出来ない。


「いいんだ。気にしないでくれ」

「理事長、そろそろ生徒が来ますよ」


桐也先生が、良仁さんに声をかける。


「もうそんな時間か。すまないね八君」

「…いえ」


おれと良仁さんが話している所を生徒に見られる訳にはいかないんだろう。
良仁さんは足早に体育館のステージ裏に去って行った。


「八、」

「?」

「お前は端の方にいろよ?」

「…わかりました」

「じゃあオレも用事があるから行くな。大人しくしとけよ」


ぐしゃぐしゃにおれの頭を撫でて、桐也先生はどこかへ向かった。



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