「星……」 「ああ、きれーだな」 潮風に吹かれながら、一言私がつぶやくと彼はそれに必ず答えてくれる。 「今夜の風、って…」 「これ着とけ…寒くなる」 「…あざーす…」 彼には私の言わんとしていることが全部分かってしまうらしい。そして分かった上でかけてくれる言葉がまた紳士的で憎たらしいもんだ。 普段は意地悪で偉そーなくせに。 いきなり優しくなる。 「ねぇ准将、」 「俺は准将って名前じゃねぇ」 「っ……す、すもーかー」 「慣れねえなら准将つけてもいいぞ」 「(先に言えっつの)なんで、す、スモーカー准将は…私の言いたいことが分かるんですか?」 一瞬。ほんの一瞬だけ彼の目が色づいた気がした。何色にって?そりゃあ、この海面みたいな夜空の色にさ。 「…なんでだろうな。俺にも分からん。」 准将でも分かんないことってあるんだ。どうやら私の中で准将は、万事を知る神に近いらしい。 「ヒロインちゃん、お前は分かるか?」 今度は逆に質問されてしまった。 「あー…うーん、と…」 「分かんねえだろ」 「……まあ、はい…」 なんだ?准将のこの余裕ぶった顔は。なんか負かされた気分だ。自分だってわかんないくせに!軽く睨んでみると彼はニヤリと笑みを浮かべやがった。 「なあヒロインちゃん、ちょっとした遊びしねぇか?」 「…いーですよ」 「明日の朝までに、先に答え出した方が相手の大切なもん貰うってルールだ。」 「お、いいですねえ〜(准将の大切なものは十手かなあ)」 「……因みに俺はもう答えでたぞ」 「え」 「大切なもん取られたくなかったら、せいぜい答え出しとくこったな!」 そう言って自室へ戻っていく准将は、実に愉快そうだった。 悔しい。すごく悔しいんですけど!准将が私の考えてることを、先に読める答え?そんなんあったらこっちが聞きたいわ! 甲板で一人考えるも、答えは見えそうにない。愉快そうに堂々と寝に行った、彼の残り香ばかりが頭を支配する。ああ、タバコくさくて集中できない!これじゃあ他のことなんて頭に入らないじゃない! 星空メランコリック (あなたしか考えられない)(それはなんて贅沢な憂鬱) ‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 信頼してるから言いたいことが 分かっちゃうんですね。 タイトルはTHE ALFEEの名曲 『星空のディスタンス』から。 もっと甘酸っぱい作品 書けるようになりたいorz 20090506 [前へ][次へ] |