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55:【言っておくが告白でも何でもねェんだから勘違いすんなよ】1

"キフリ"、彼は記憶喪失者だ。自分の過去を全く知らない。

彼は気付けば頭は包帯ぐるぐるでベッドの上に寝かせられていた。そこが白ひげ海賊団の船の中だと気付くのは少し後になってからだ。

海に丸太に縋り付く様にして流れていた彼を白ひげ海賊団が発見し保護した。

彼は当時12歳。まだ幼いながらにも記憶が無い、自分が誰だか分からない事に困惑し助けてくれた白ひげ海賊団にさえ心を開かず塞ぎ込んでいた。(因みにこの頃から"あの夢"を見始めた)

相手が海賊故か、自分はこれからどうなるのだろうかと思い悩む日が長く続いた。出してくれる食事にさえ手をつけようとしなかった。

そんな状態が5日続いた時、普通の子供なら栄養失調を来すだろう頃。彼の元に白ひげ海賊団の船長、エドワード・ニューゲートが尋ねた。


「小僧、名は?」
「・・・・・・」
「俺から名乗れってか?俺はエドワード・ニューゲート、この海賊団の船長だ」
「・・・・・・」
「ああ、そうだったなァ。お前、記憶が失いんだったか?名前も忘れちまったか」


白ひげは考え込む様に少し黙ると、

「それじゃあ俺が名前付けてやる。俺が名付け親、ってーのは少し違うかもしれねェが」


キフリ、ってのはどうだ」――そう白ひげが名付けた瞬間、その日から彼は"キフリ"になった。

白ひげから名前をもらってからのキフリは、廃人寸前だった目に生気が宿り、食事に手を出すようになった。

とは言っても白ひげが持ってきたものしか最初は食べなかった。名付けてくれた白ひげにだけ心を開いた様だった。

失くしてしまった記憶、自分が何者かも分からない状態は壮絶に辛い。キフリは自分の存在意義すらまだ幼い頭で考えていた。何故自分はここにいて生きているのだろうか、と。

名前も忘れたという事はまるで存在がないのと同じだ――。診察にくる船医や食事を運んでくる者にもちろん何か固定名詞で呼ばれた事はなかったのだ。

追い討ちの様に、海賊に対して非道残虐なイメージしか持っていなかった彼の考える末路など死しかなかった。

最早絶望に打ちひしがれて、生きる道もない。

そんなところに白ひげが自分の存在を確立させてくれた。仲間に迎え入れてくれて最悪の末路もなくなった。

それから徐々に徐々に、少しずつ白ひげ海賊団に心を開いていった。キフリは白ひげ海賊団という輪の中で育っていった。

名前を呼んでもらえる度、自分という存在がここにあるという事を実感する度に嬉しかった。

それから3年が経ち、非戦闘員だったキフリが申し出た。「自分を鍛えてくれ」と。

自分も戦える様になって、白ひげ海賊団を守るのだ。そして何時かは白ひげを海賊王へ。それを強く望んだ。

キフリは1番隊隊長マルコの下に付き、戦闘の術(すべ)を身に付けていった。

元より頭を強く打ち付けていたので体はあまり動かしていなかった彼は貧弱だったが、マルコの指導(鬼畜)により体力は増え成長期も相まってどんどん力を付けていった。

現在(いま)じゃ隊長には及ばないが実力のある強い戦闘員になった。

キフリは自分が何者かである事はもう考えない様にした。恩ある白ひげの下で、生きていく。



と、彼の経緯を説明するとこんな感じだ。現在は何も悩みなどのない様な変態で女タラしのお気楽野郎に見えるが、実は一風変わった過去の持ち主である。

むしろそうだったからか、その反発でそんな性格になったのかもしれない。そんなキフリは今ひずにの部屋の前でひずにが帰ってくるのを待っている訳だが。


「(帰ってこねェ・・・♯)」


まだ自分が戻って30分程度だったがいち早くひずにに会わないといけない、というキフリの思いが焦らせていた。

しばし考え込んだキフリは食堂へと足を運んだ。そう言えば料理長にお使いを頼まれたと言っていた。いるかもしれない。

食堂の扉を目の前にした時、開けようとした矢先に扉が動いた。向こう側から誰か出る様だ。

だがそれはゆっくりで、キフリは変に思ったが急いでいるのでガッと取っ手を掴み開いた。


『のわっ!;』
「! いた!」
『わわわなんだいキフリ君?僕は急いでるから失礼するよじゃあ、なっ!!?;』
「嘘付けコラ。急いでる奴があんなゆっくり扉開くかよ」


どうやらひずにはキフリに気付かれぬ様にそっと抜け出そうとしていた様だ。

キフリがキッとした顔でひずにの頭を掴む。そのまま力をこめる。


『イタタタタ!!;やめいやめい!ドロップキックは謝っから!;』
「今はそんな事はどうでもいい。俺に付き合え」
『は「キフリコラァァアア!!!」「のわっっ!!!;」』


そこに現れたのはエースだ。どこから沸いてきたのだろう。

大声で急に現れたものだからびっくりして手を離してしまったキフリ。ひずにはその間にエースの後ろに隠れた。


「キフリ・・・今ひずにに・・・!!」
「あー、隊長、ひずにの頭アイアンクロってたのは謝r「告白したのかァァァアアア!!?」ハァァァアアア!!?;」


言葉を遮りながらも急に何を言い出すのか。


「急に何の話ですか隊長!!俺はこいつに告白なんてしてねェ!!;」
「うるさいっ!!今俺は見た!!お前が大事な大事な俺の娘に詰め寄っている所を・・・!!」


グッと涙目でふるふる震えながら睨み付けるエース。

がっくりと全力で脱力したキフリ。


「ひずには誰にもやらァァアアん!!!(泣)」
「うるせェ!!!;泣き叫ぶなっ!!ただひずにと話が・・・!!」


(って、いねェ!!ひずにいねェじゃねーか!!!)

エースの後ろを見遣ったがひずにがいない。


「(あいつ隊長に任せて逃げやがったな・・・!!♯)」
「キフリまたお前タメぐ「こんのォォオオ!!!」タメ口の次は無視かよ!!!」


キフリはひずにを探しだす為に猛ダッシュで走り出した。

エースもひずにが居ない事に気付き、慌ててキフリの後を追った。





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