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49:【信じて疑いませんでした】

『あづー・・・』


ひずにはパタパタとうちわを振って風を少しでも起こそうとする。

今白ひげ海賊団の船は島が近いのかその島の気候に入っていた。とても暑いところから今回は夏島らしい。


『暑い暑い暑い・・・と言うかこうやって扇いでいるのも暑い』


ひずにの今の格好は袖無しのシャツに短パンでサンダルとまっことラフすぎる格好だった。

そしてパタパタとうちわを扇ぎながら歩き、涼しい所はないかと探しているのだった。

周りを見るとこの暑さのせいでだれているクルーが多かった。外で作業をしている者は直射日光に見事に体を焼かれていた。


『あっつーい!!もう!涼しい所ないの!!?あっついぞー!!!脳味噌溶けるぞ!!狂うぞ!!』


もうひずにはヤケになってうちわをぶんぶん振る。だが勢い良く振ってしまったせいか疲れて更にかきたくない汗をかく羽目になってしまった。


『あーイライラする!暑いの嫌い!汗かくの嫌い!海は好き!スイカは好き!花火!かき氷!』


もはや夏の名物を挙げ出すひずに。初心を忘れているとしか思えない。


『こういう時は空飛んだ方が涼しいのかな・・・。いやでも太陽に近づくからもっと暑いんじゃ?』


ひずにはぶつぶつ呟きながら船内から外に出た。中の方は蒸し暑いのだ。蒸されるよりは暑いだけの方が良いらしい。

ひずには木箱の影に座り込む。


『早く島に着かないかなー。そしたらアイス買いに行ってたくさん食べる!決めた!まず第一にアイス!』
「なんだ?アイスが食べたいのか?」
『あ、エース』


ぐだぐだと大声で独り言を言うひずにの声を聞きつけてか、エースがやってきた。


『うん、アイス食べたい。島上陸したら一緒食べに行こエース!』
「ああ良いぞ!全種類食べような!」
『やったァ!エースの奢り!さすがパパ!』
「お、おう(ひずには払わないのか!?;)」
『楽しみだな〜v』


本当に楽しみにしているひずにを見てしまえば、エースはそんな考えは吹っ飛ぶのだった。

―――時間は経ち、やっと島に上陸した白ひげ海賊団。


『いィやっほう!!エース!着いたよ!』
「ああ、それじゃ行くか!」
『わーい!!』


袖無しシャツの上に軽く羽織ってひずには船からエースと共に飛び降りた。


『街に急ごう!』


ひずにはわくわくと早歩きをしながら街に向かいだす。エースはそんなひずにを見てデレデレと頬を緩ませていた。可愛い娘だと。

街に着きひずにとエースはカフェに入った。中はとても涼しくひずには生き返った心地になった。


『涼しー!エースエース!アイス頼もう!』
「それじゃここにある全種類だな!」
『うわーい!!』


夏島でもあるせいかアイスの種類は豊富であった。レギュラーな物から珍しい物まで様々だ。

約30種類あるのを全部頼み、店員を驚かした2人は仲良くパクつきだした。


『うんめー!!この海王類の肉が入ってるってやつ!全然甘くて美味しいよ!?』
「ホントか!?一口くれよ!」
『はい!アーン!』
「おおっ!確かにうめェ!!」
『でしょでしょ!!あ!この紫色のやつ美味しそう!』
「それはここで穫れるさつまいもの一種らしいぞ」
『あ!確かにさつまいも!さっぱり甘ーい!』
「ひずに、口の周り付いてるぞ」
『ん、どこ?』
「ほら、取ったぞ」
『ありがと!』

きゃいきゃいはしゃいでまるでカップルの様。・・・アイスの量を除けばだが。


『ぬはー!美味しかったァ!』
「まだ足りないなー」
『エースはまだ足らないだろうね。ハハハッ』
「にしてもひずにとこうやって出掛けたのって久しぶりだな!」
『そうだね。いつも僕がいなくなると泣き叫びながら探すから、あまりエースとは出掛けたくなかったんだよねー』
「えええええ!!?」
『嘘だから!そんな大声出さないでよ(半分本気だけどねー)』


ひずに酷い。

アイスを食べ終わってしまった2人は、また外に出て適当に歩いていた。

この島は大きく、今エース達がいる街は船が上陸した場所に近い所であってまだまだ他にも街があるのだ。

向こうを見やれば山や河と自然もある。子供達が涼しそうな格好をし、虫取り網を持って駆ける姿が見られ、治安も悪くない夏休みの様な島だ。

途中で出会ったクルーに聞けば、ログは4日で溜まるらしい。


「次はどこか行きたい場所あるか?」
『うーん、第一目標は達成したからー・・・その次を考えてなかったな』


暇なのでぶーらぶーらと行く宛てもなくのんびり歩いていた2人。

と、ひずには少し遠めに赤いものを見つけた。


『(なんだろ・・・チューリップ、蓮?が動いてる・・・)』


一定の高さを保ちつつしかし少し上下に動きながら、ひずにの言うチューリップ又は蓮が動いていた。


『エースエース、見てチューリップか蓮か分かんないけど動いてる』
「え?・・・花が動いてる?」
『うん。ほらほら、アレだよ』
「んんん?」


ひずにが指指すものの、エースは何か分からない様で。


『いや、だからさ、アレだって。ちょっと近づいてみよう』
「お、おう」


ひずには真っ直ぐにチューリップ又は蓮を見つめながらエースの腕を引っ張りながら歩き出した。

ひずにの向かう先のものに段々と近づく事でエースは気付いた。アレはチューリップでも蓮でもない事を。


「ひずにちょっと待て。ひずにが言っているのはあの事か?」

       ・
そしてエースは頭を指した。


『そうそう!やっと分かった!?見事に花が動いてるよー』


『グランドラインって凄いね!』とお門違いにも甚だしい言葉を出しながら感動するひずにを見ては、エースは「あー・・・」と曖昧な事しか言えなかった。

ひずにがさっきからチューリップだの蓮だの言っていたものは、実は人の頭で。

ひずにはその下にある暑苦しそうなコートを着た体は、信じて疑わなかった"動く赤い花"に夢中で見えていなかったのだった。

エースはそれをひずにに言おうとしたのだったが。


「さっきから俺の後ろを付いて来やがって、何だお前等賞金稼ぎか?」


その前に赤い髪の毛を逆立たせた長身のがたいの良い男が振り返ってそう言った。


「俺が1人の時を狙ってか・・・?勘違いすんじゃねェぞ。俺は1人だろうがお前等ごときどうとでもねェ」


その途端ひずにはハッ!!!と声にも出して見る者全てが分かるような驚き顔でその男を凝視した。


「(ひずに?)」


そんなひずにに自分も驚きながらどうしたのかと思えば。


『ゆーすたまつ#$%〜〜!!?』
「おうわっ!!;」
「・・・・・・んぇぇええええ!!!??」


途端にひずには叫びながらその男、ユースタス・キャプテン・キッドに飛びついた。


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