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でもそれは叶わなかった。
兄は2つ3つ国を越えた所の戦争、戦場で泣きじゃくる恰好の的の子供を救う為に命を落とした。
報せをうけれる様な時代じゃなく、妹はやっと平和になった故郷で兄を待ち続けた。
そして、老衰で息を引き取るその日まで妹は待ち続けた。
あの世なんてないのよ。魂はまた生まれる子供達に宿っていく。
そしてその行き着く先はそれぞれ違う世界だった。
生まれ変わっても魂は覚えてる、って言ったわね?とびきり絆の強い兄妹だったから魂は別世界でも惹かれあっていた。
それに、約束を果たせなかった兄の最後の思いは強かったはずだからね"
「ひずにちゃんは〈神様の落とし子〉としてやってきて、ボクは偶然にもソウルメイトに出会った訳よ」
「・・・どっかで聞いた事がある様な話だな。つか壮大だな」
「その話を聞いた分だと、まるでキフリがひずにをこの世界に引きずり込んだみたいだよぃ」
「ちょ、言い方悪くないですか?俺って言うより前世の魂じゃないですか」
「そうね、そうとは言い切れない。落とし子が来る由縁が別世界にいるソウルメイトに惹かれるものとは断言できたものじゃないし。
時代的なものなのか、天災が起きた時、はたまた何かの節目にか、それともこれといった理由がないのかもしれない。
・・・神様ってのは本当に気まぐれなんじゃないかしら」
フフフ、と笑いながらひずにの頭を優しくなでる。
「とりあえず、私から言う事はもうないわ。じゃあねひずにちゃん」
『ええー・・・もうお姉さん行っちゃうの?』
「ええ。これ以上ここに残ったって意味ないもの。お邪魔したわね」
占い師は医務室のドアに向かうので見送りを兼ねて着いて行くひずに。
占い師はドアノブに手を掛けたまま振り返らずに呟く。
「ボク、もう自分で答えは出せるわね。
ひずにちゃん。初めてこっちに来た時の気持ち、忘れちゃダメよ」
「!」
『ほえ?』
そしてするりと扉の先に抜けて行った占い師に、もう一度何を言ったのか聞こうとひずにも廊下に出た。
だが驚いた事に占い師の姿がない。まるでこのドアから別の場所に抜けた様にさっぱりいない。
『どこでもド○?』
「どうしたんだひずに?」
『いや、お姉さんがさっぱり消えた』
エースの問い掛けに廊下を左右キョロキョロ見回しながらひずには首を傾げた。
「不思議な人だったな。よく分からなかったが」
『うん。不思議な力を持ったお姉さん』
「それよりひずに、お前もう少し横になっとけ」
『うん横なるー。っのわっ!』
隣に並んだエースを見上げ様として天井を向くひずに。何故ならエースがひずにを横抱きしているからだ。
『ちょっ、何?降ろせ!横抱きは嫌だァァァ!』
「気絶した時もこうやって運んだんだぞ?」
『ええええ!?まさか皆にこんな状態をみ「見たよぃ」ええええ!!』
そんなァァァ!うっ、頭痛っ!と腕の中で騒がしいひずにをベッドに降ろすエース。
「ちゃんと安静にしとかないと」
『ううっ、ち、チクショー。お姫様抱っこは僕の役目・・・無念』
もぞもぞと毛布をかぶり唸るひずに。
「・・・・・・」
「あの占い師、何かお前に言ってなかったか?」
「・・・さぁ」
「気のせいか。お前も横になっとけ。何かと整理つけなきゃなんねー事あるだろぃ?話す事があったら起きてからだ」
うっス、とどこか上の空で呟くキフリに疲れてんのかとマルコは思った。
そしてキフリがベッドに腰掛けたのを見てからマルコとエースは医務室を出て行った。
「ほら、キフリ君横になっていて。私達も部屋を出るから」
そう言って船医もアンも出て行く。
「・・・・・・」
ひずにの寝息をBGMにキフリは座ったまま考え事をしていた。
* * *
頭の腫れが治ってきたキフリ。
頭のたんこぶが治ってきたひずに。
いつもの活気が戻る船の皆。
そんな頃、次の島につくらしい。
『おお、何か暖かい』
「て事は春島か?」
「春島かー・・・」
島の気候に入ったという事はそろそろ島も見えてくる。日は高い頃だからおやつ時には着くだろうか。
結局夢は自分の記憶とは関係なかった。そう思うと残念であった様なない様な。このままでいいのかよくないのか。
春風の暖かさに包まれてうやむやになるキフリだった。
3時過ぎ、春島に到着した。
各々目的を持って島に上陸していく仲間達に紛れながらキフリも上陸した。
暖かな春風に包まれて生活しているせいか、この島に住んでいる人達も温厚な人が多い様だ。
しばらく見回って何時もの様に弾の補充を済ませ必要な物を買い、ぶらぶらと歩き回っていた。ナンパをする気はなかった。
そしていつの間にか活気ある港町から離れ静かな村に足を踏み入れていた。
そしてそのまた村の端に見える緩やかな坂を自然と歩く。一軒の家が見えてきた。
「(・・・ここ)」
その家は元々壁は白かったのだろう。今は雨風にあおられてきたせいかくすんでいる。屋根も青色だと思わせた。
この家には人が住んでいない。窓から覗ける部屋は生活感が感じられず誇りがかぶった状態だ。
幾ら放置されたままなのか。それから目を逸らしキフリはまだ続く坂を歩く。
次に見えたのは、――崖の上に建てられた墓標だった。
崖の先は海になっている。赤かがった夕日が眩しい。
2つのに挟まれた1つ小さな墓標。キフリはその前に膝をついた。
「・・・・・・。
ただいま。父さん、母さん。
俺、生きてるよ」
―――
とある春島。
いつでも温かな風が吹くこの島。島民も温厚で平和の一言に尽きる島だった。
その島の1つの村に子供がいた。
その子供の両親――子供と同じように髪が白い――と3人で暮らしていた。
子供はよく話をした。1日1日見る夢の話を。
夢の内容は子供が体験・見た事がないはずのものばかりであり、そしてそれは何十年も前の様な事だった。
夜うなされている事もたまにある。そう言う時は戦争と思わされる内容が多い。
少し不安になった両親は村の村長に相談をもちかけた。
ある日の夕暮れ。家の近くにある海に望む事のできる崖の上。
子供は海に沈む夕日を眺めていた。この景色が大好きで毎日見ている。
夕日が完璧に海にのまれそうになった時、不意に後ろに足音が響いた。
お父さんかお母さんかと思い、子供は振り返った。
だがそこには真っ黒なスーツに身を包んだ背の高い男、いや、男なのか分からないが立っていた。
夕日は沈みあたりは暗くなっている。不安を覚えた子供はその場から去ろうとした。
だが名前を確認する様な男からの言葉に子供はびくりと立ち止まる。それだけで十分だったのか、その男は動いた。
瞬間、子供は鈍器の様な物で殴られた。急な事とあまりの痛さに気を失いそうになる。
倒れる間際、女の人の叫び声と男の人の怒鳴り声を聞き、子供は意識を失った。
―――
『キフリ遅くねー?ああ女ひっかけてるんですね分かります』
「ちょっと前に色々あったからな。気分転換に遊んでるかもな」
『かなー。結局夢はキフリの記憶とは関係なかったみたいだし。たくよー』
甲板の柵に肘をつき、むくれ顔を夕日に照らすひずに。
「記憶戻らなかったからな・・・。マルコが一番がっかりしてんじゃねェか?」
『・・・かもね。エース、キフリが船から降りる可能性がなくなったから喜ぶ僕ってやっぱ最低かな』
「・・・そんな事ない。俺だってそう思った。だって仲間じゃねェか」
『でもキフリ記憶戻したがってたし』
「ひずに・・・お前はなんて良い子なんだ・・・!(泣)」
『すがりつくな頬ずりすんな泣くな!』
ぐりぐりと頬ずりをしてくるエースを嫌そうに押し返そうとするひずにだった。
「全く騒がしいよぃお前ら」
『マルコ隊長助けてっ!これ剥がして!』
「これって!物扱い!?」
「・・・お前らに話しとかないといけない事がある」
『ん?』
そこにマルコがやって来た。毎度の様にため息をついたがすと顔を引き締めた。
「あいつ、記憶は戻ってるんだ」
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