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59:【たどり着く真実】1

場面が変わる。映写機にフィルムが入れられパッパッと映像を切り替える様に。


(ほら、お前の好きな川の底の石!綺麗だろ?)
(わァ本当だ!凄く綺麗!)
(また拾ったらお前にやるよ)
(ありがとう!大事にするね!)


幼い2人は夏の空の下。


(追い出されちゃった・・・)
(ああ・・・)
(これからどうしよう・・・?)
(心配するな!お前には俺がついてる!俺がなんとかするからな!)


少年少女は夕暮れを行く。


(――じゃあな、元気にやれよ)
(本当に行っちゃうの?)
(・・・俺はまた戻ってくる。一生の別れなんかじゃない)
(そっか・・・。必ず、帰ってきてね)
(ああ、絶対お前の元に戻るから)

(待っててくれ、―――)
(待ってるから、―――)


そして朝靄の中、影は1つしか残らなかった。


「(・・・あ)」


これは、見た事ある。

何度も見た。でも何時もと違うのは女の声もはっきり聞こえた。

そしてもう1つ、何時もならここで目が覚めるはず。

しかし場面が、いや、空間が何もない白に変わる。


(や・・・えた。)


「(・・・?)」


男の声?


(・・・らず、か・・・ってやく・・・したのに。

・・・った。お前を一人・・・しまって。

ごめんよ。もう一緒だから)


(「ただいま」)


ガクン


「おいキフリ・・・!?」
「キフリどうしたんだ!?」
「大丈夫かよ!!」


倒れ込んだキフリの名を呼び掛けながら、マルコは慌てて腕を掴み引っ張り起こす。

そして膝立ちのまま肩を掴んでガックンガックンと揺さぶる。


「おいキフリ!キフリ!」
「・・・マルコ隊長、離して下さい」
「! 気付いたかよぃ!」


呼びかけられる声にキフリは気が付いたのか、ゆっくりと頭を上げまだ焦点が合わない目をこする。

そしてマルコを見て意外そうな顔をする。心配そうな顔のマルコなんて初めて見たからだ。

そこにエースも覗き込む様に膝をついた。


「キフリ大丈夫か?」
「エース隊長」


これまた新鮮な事に意外な顔をするキフリ。


「あ、ここって?」
「医務室だ」


エースの言葉にぐるっと頭を回し周りを確認するキフリ。確かに医務室で船医とナースがいる。すぐ背後にはベッドがある。

少し痛んだ頭に眉をしかめつつ正面にいるマルコに声を掛けられる。


「お前、上からひずにが落ちてきて頭ぶつけたんだよぃ。覚えてるか?」
「あ」


そうだった、と言わんばかりに目を見開くと立ち上がろうとする。そんなキフリを抑えるマルコ。


「急に立ち上がろうとするんじゃねェよぃ。またぶっ倒れるぞ」
「大丈夫ッス!それよりひずにに会わねェと!」
「ひずになら・・・」


ナースのアンが指を指し示す。そこはキフリが寝ていたベッドの向かい側だった。


「今は眠ってるわ。キフリ君と同じで頭を打ってるから今はあまり・・・」
『大丈夫アン、僕起きてるから』


横になり眠っていたと思っていたひずにから声が上がる。そしてゆっくりと起き上がった。


「おい、分かった!あの夢の事が」


痛む頭を抑えながら立ち上がりひずにに寄る。ひずには黙ってキフリを見上げた。


「あの2人の男女、あの2人、

兄妹だったんだ」

『うーん、やっぱそれっぽいよね』
「! お前知ってたのか?」
『いや。多分、キフリと頭ぶつけた時だと思うけど、こう映像が流れ込んできたと言うか・・・』
「お前も?」


キフリとひずににしか分からない会話だった為医務室にいた他の者にはさっぱりなんの事か分からなかったが、黙って2人のやりとりを聞いていた。


「俺も夢の中でそんなだった。んで・・・何時もと違うのもあったんだよ」
『・・・"ごめんよ。もう一緒だから。ただいま"ってやつ?』
「! それも?」
『いや、キフリが言ってたんだよ』


その言葉に目を見開いて驚くキフリ。


「は?俺が?言ってた・・・?」
『うん、キフリが言ってたんだよ。ね、エース、マルコ隊長』


急に話を振られた2人は肯定しながら頷く。


「ここにいた皆が聞いていた」
「意識なかったお前が、急に立ち上がってひずにに向かって喋り出したんだよぃ」
「・・・。じゃあ、あの言葉は、」
『なんかね、それを聞いた途端、僕の心に女の声が響いた。

"ずっと待ってた。おかえり"って・・・』


フッとひずにの顔が和らいだ。まるでやっと安心できた様な。


「・・・ソウルメイト、か」
『そうじゃない?』
「あの占い師が言ってたソウルメイトの関係は兄妹だったのか・・・」


ふんふん、と2人だけで納得していた所、


「そうね、2人の魂は兄妹。そして妹の魂だけ別世界に別れた」
「「『!!?』」」


突然聞き覚えのある声にキフリとひずには振り返る。他の皆も急に現れた人物に驚きが隠せない。


「はぁいどうも!私直々にご説明に上がりました」
「『占い師のお姉さん!』」
「やぁね久しぶりひずにちゃん!会えて嬉しいわー」


突然現れたのはあの占い師だった。ひずには嬉しそうに占い師の胸に飛び込んで、それをしっかり受け止める占い師。


『(やべー幸せ〜)』
「ちょ、いきなりえ?どこから?」


エースはかなりびっくりして混乱状態だった。目をぱちくりさせている。


「まァ気にしないでね。ボク、やっとたどり着いたわね」
「は、はぁ・・・」
「夢の正体は前世の魂の記憶。戦時中だった頃、幼い兄妹は両親を亡くした」


占い師は語り出した。


"幼い兄妹は当時の戦争によって両親を亡くした。

幼いながらも兄妹は戦時中を支え合い生き延びてきた。

そして兄の方は世界中を見て回る旅に出る事を決意した。

妹はそれを寂しいながらも見送り、兄妹は約束した。

また必ず再会する事を――



後半に続きます。




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