57:【帰れる場所】
急いで部屋から出た。キフリと顔を合わせるのはもう無理だったから。
扉蹴っちゃったのはその・・・、変にぶら下がってるなんておかしいからだよ!外してあげたんだよ優しいでしょ!
自分の部屋に飛び込んだ僕はベッドにダイブする。そのままもぞもぞと布団を被ると目を閉じる。さっきキフリに言った事を実行する為だ。
でも夢を見る為何かじゃなくて。ただ眠って何も考えたくなかったなんて。そんな事で。
らしくない。らしくないけどらしくないからどうしようもない。晩飯前だけどいい、寝る。
僕は出来るだけ何も考えない様にして眠るのを待った。
―――
(・・・・・・)
(わァ本当だ!凄く綺麗!)
(・・・・・・)
(ありがとう!大事にするね!)
幼い2人は夏の空の下。
(追い出されちゃった・・・)
(・・・・・・)
(これからどうしよう・・・?)
(・・・・・・)
少年少女は夕暮れを行く。
(・・・・・・)
(本当に行っちゃうの?)
(・・・・・・)
(そっか・・・。必ず、帰ってきてね)
(・・・・・・)
(・・・・・・)
(待ってるから、―――)
そして朝焼けの中、影は一つしかなかった。
『!』
今、見たのは。
『・・・チッ』
舌打ちしちゃったよ。可愛いヒロインが☆
って現実から逃げるのも舌打ちと同じ意味だ。
キフリから聞いた見知らぬ男女って奴だ。何だろうか今の。その2人の成長?の過程を見ていった感じの様なんだけど・・・。
つかおいおい・・・。こんな偶然良く見ちゃうか普通?この時にこんな風に見ちゃうもんなのか普通?
・・・キフリに話に行かなきゃ・・・?
それを考えるだけで酷く体がだるく感じた。
『・・・ハァ』
て言うか気分が下がる。こんなの嫌だなー、ハツラツといたい。
僕はむくりと起き上がると部屋を出る。
『・・・・・・』
出たのはいいけどやっぱりキフリの元にはどうしても行く気はなかった。ハァ。
夜中だしどうせキフリ寝てるだろうから朝でいいじゃん。そうだ夜中だしいいか。ハァ。
「ひずに」
『ん』
すこぶる下がるテンションの中話し掛けてきたのはエースだ。何で起きてんの。
僕の表情から今の気持ちを悟ったらしいエースが眉を寄せた。
「キフリの事か?」
『まァね。エース、エースはさ』
「俺はキフリが船から下りるなんて反対だ!」
『(まだ最後まで言ってねーだろ!)ああうん、そう』
「え、何でそこ棒読みなの」
いやつい。
『・・・記憶を取り戻したらキフリは、元の家族の所に行くって』
「何!?」
『それでね。さっきまで寝てたんだけど。夢、見ちゃったんだ』
「マルコも言っていた?」
『うん』
こくりと頷けばエースは僕の両肩をがしりと掴んできた。びっくりしたァァァ。
「ひずに!ひずにだってキフリがいなくなるのは嫌だろ!?」
『声がでかいバカエース!睡眠妨害になるから!』
「あっ、ごめん。それで、どう思う?」
『・・・エース、僕も考えた事はあるんだ』
「? 何を?」
ひずにはエースの質問には答えずに別の事を語り出す。
『僕も家族の元に帰りたいって』
「・・・!」
『だから、キフリの気持ちは解る。少し違うかもしれないけど』
マルコ隊長やキフリの言葉を聞いて、前に家族や友達が恋しくて泣いてしまった時の気持ちを思い出したんだ。
凄く会いたくて。でももう無理だろうから。
『僕のは只のホームシック。でもキフリは違う。帰れる家族の場所がある』
「・・・・・・」
僕は伏せていた目を上げてエースを見る。―――とぎょっとした。
何でこの人真顔で泣いてんの!?
『エース、何で真顔で泣く「ひずに!」ぎゃあ!!』
真顔泣きでまたガッと両肩掴まれつか顔近いィィィ!!ぎゃああああ!!怖っ!!
「何だかお前の言葉を聞いていると、まるで2人共ここが"帰れる家族の場所"じゃないみたいだ」
『・・・!!』
エースの言葉に目を見開いた。そんな事はないそんな事はナイ。
《そんな事はない!!》
「、ひずに」
《今ここは僕の帰れる場所!白ひげ海賊団は家族!!大切な場所・・・っ》
「・・・ああ」
《エースやマルコ隊長やおじいちゃん、そんで・・・
キフリが、皆皆が居るところ》
キフリもそうでしょ?
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