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ひずにはというと、
『おじいちゃん!!匿って!!』
「お、おぉ。どうしたんだひずに」
「ちょっとひずに!白ひげ様の身体に障るから騒がないの!」
「どうしたの?」
おじいちゃん、もとい親父の所に隠れに来たのだった。
『しーっ!静かに!とりあえず誰が来ても僕の事は知らないって!そう言って!』
「えぇ?でも・・・」
『お願い!お姉ちゃん!!』
「! 仕方ないわね」
「ひずにの頼みならね」
(お姉ちゃん) こうかは ばつぐんだ!!
全て計算づくめのひずに。いらぬところで頭を働かせるのである。
しばらくしてガチャッと部屋の扉が開く音。
「悪い親父。ここにひずに来てないか?」
キフリの声だ。ひずには思わず身を固くする。
「ひずにはここには来てねェぞ。なァナース達」
「ええ。ひずには来てないわ」
「見てないわよ」
親父とナースの見事な演技にガッツポーズを決めたひずにだった。
が、
「そうか・・・見たら伝えてくれ。ひずにのタルト食っちまったって」
『嘘ォォォォォ!!!』
「「「ええええ・・・」」」
キフリの一言により親父の背から飛び出したひずにだった。おバカだ。
「フッ、バカめ。まずお前のタルトなんぞないわ」
『ハァァァ!!?てんめ騙したなー!!』
「騙された方が悪い。おら、付いてこい」
『うわァァァ!!おじいちゃーんお姉ちゃーん!キフリに拉致られるー!』
「キフリ!お前ひずにに何する気だ!?」
「そうよ!!ひずにを離しなさい!!」
ひずに大事同盟(正式ではないが意識は皆同じ)の猛攻!
「何って、」
駄菓子いや、だがしかし、
「ただ話をするだけだ。大事な」
「「「!!!!」」」
ピ シ ャ ー ン ・ ・ ・ !!!
キフリの方がパワーが上だった。
多大なダメージを親父達に喰らわせ瀕死状態にさせると、キフリはひずにを摘んだまますたこらと部屋を後にした。
『おいおい・・・あれじゃ勘違いしてんじゃないの?つか離せ』
「いいんだよ。じゃねーとお前をさっさと連れ出せなかっただろうからな。無理だ」『いやいや、もうあのドロップキックは忘れなよ!何時まで根に持ってんの?いいから離せ』
「ドロップキックの話じゃねェ。ここでいいか」
2人がやってきた場所は倉庫と言うより物置みたいな場所だ。
『ちょ、拉致した上に監禁か!?お前そんな趣味「いいから黙れ!!そんなんじゃねェバカ!!」』
ああもう、と言いたげに頭を振り、キフリはひずにに向き直る。
「お前街で聞いたろ?あの占い師の話」
『ん?・・・あぁ!!あの綺麗なお姉さん!!』
「そう、あの綺麗なお姉さんだ。信じがたいが俺とお前はソウルメイトってやつだ」
『あー・・・すっげー複雑・・・!!』
「そこまでか」
まさに"orz"の形で凹むひずにを見てため息をつきつつ。
「それでだ。お前に聞きたい事がある」
『何さ』
「お前変な夢とか見てないか?」
『変な夢ぇ?』
「あぁ。変なつか、繰り返し見る夢とか」
『えー・・・?』
まず自分との何か共通点はないのか。あるとしたら自分と同じ夢を見ているかどうか。
キフリにはそれしか今のところ手掛かりがない。
うーんと考えるひずにを黙って待った。
『ない』
「そうかよ・・・」
ひずにの返答にがっくりしつつも次の質問をする。
「そんじゃよ、男女が出て来る夢は?」
『男女が?てかそんな夢沢山見てるから分からないって』
「多分見たことない知らない男女2人だけが出て来る夢だ。そんで喋ってる」
『んー。・・・あ』
ひずにが目を軽く見開きながら思わせぶりな声を出す。
すかさずキフリは食い付いた。
「! 見たか!?いつ見た!?」
『はっきり覚えてないけど・・・』
確か、と続けるひずに。
『見たことない知らない男女・・・うん。喋ってた』
「何て喋ってるかは聞いたか?」
『うーん。そこは全然覚えてない』
「マジかよ・・・」
見るからにがっくりしたキフリに『でも、』
『見たのは僕が初めてこの世界に来た次の日だったかな』
「そうか。・・・」
『もう大分前になるけどこの世界に来た驚きで覚えてたのかな』
ひずにのその言葉にふむ、と考えだす。ひずにはそう言ったが、
・・・・・・・・・
別に解釈すればこの世界にきてからその夢を見たと言う事だ。
「いいか、何が何でもその夢を思い出せ」
『や、無理でしょ』
ソウルメイトと言う前世の繋がり。その繋がりからひずにも自分と同じ夢を見たなら、確かにあの占い師が言った様に自分の鍵になる。
絶対何が何でも解いてやる。
『ってゆーか、何?それを聞いて何するの?あれ?何で僕が拉致られ監禁されたのか分からなくなってきた』
「まず一つに、俺はお前を拉致したつもりも監禁したつもりもねェ」
『いや、拉致はしたろ』
「いやしてねェ・・・かも」
『ほらみろ!!んで、夢の事なんか聞いてどうするつもりだったの。ソウルメイトってのは?夢占い?』
「あー・・・。お前に話すの面倒だから、親父からでも聞いてくれ」
『え、親父から夢占い?ありえん!!』
「違うわ!!なんつーか、俺の生い立ちみたいなもん!それ聞いたら分かる。俺よりまだ知ってるだろうから」
『え?何それ意味解んない』
ひずには本当にさっぱり意味が解っていない様だったが、キフリはしっしっとばかりに手を振ると物置を後にした。
自分が後出来る事は何かないかと思ったが、もはやここはひずにの記憶に任せる他ないようだ。
もしくはまたその夢を見る事があったならば。
そんな都合良く事が運ぶとは思えないが願うしかないキフリだった。
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