勇輝は自分のベッドで規則正しい寝息を立てている。さっきまで、不安な顔を見せていたのに。頬をつつくとこそばゆかったのか、ぽりぽりとそこを掻いた。
今度は頭を撫でると、嬉しそうな顔をする。こうやって手を差し伸べれば、素直に答えるのに。
なんでわからないのか。
「……」
勇輝の布団に潜り込み、もっと近くで眺める。睫毛が長く、髪を伸ばせば、間違いなく女の子に見えてしまうだろう。
そんな大輝も、昔は間違われた事があった。大きな瞳に見つめられると吸い込まれそうだと言われた事を思い出す。大袈裟だと思ったが、自分より少したれ目なとこを除けば、目元が似ている勇輝を見ていると、他人に言われた事に納得した。
「……」
大輝は上半身だけ体を起こし、勇輝の向こう側へ片手を付き、更にじっくりと観察をする。
近付けば勇輝の匂いがして、目眩が起こる。まるで、誘惑されているようだった。
「勇輝」
名前を呟いた事が、合図のように頬や首、耳にそっとキスを贈る。
「……はぁ、勇輝」
身動ごうとするのが分かり、少し離れて様子を見た。
「んっ…………にいちゃん?」
起きてしまった。残念に思いつつ、何を言われるのかと構えたが、杞憂だったようだ。大輝が隣にいた事に驚きもせずに、嬉しそうに笑う。
「……ごめん、起こして」
「にいちゃん」
大輝の方を向くと、寝惚けた顔で抱き付いてきた。勇輝の体温がほんのり伝わって心地よい。
「甘えただな」
「大好き」
「……」
寝惚けて言ったのだとしても、大輝の心に刺さり、鐘のように何度も繰り返す。寝たのを確認してから、唇にキスをした。
あぁ、何て可愛いのだろう……。
2015.11.29 完成