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■本編03

「眠れない?」
 一緒にお風呂に入った後、部屋の鍵を閉めて、大輝の布団に潜った。大輝に寄り添う形で寝ている勇輝は、困った顔で頷く。
「じゃあ、話をしてあげる」

 あるところに、小さなアヒルがいた。毛色、見た目も醜い所為で兄弟に虐められ、初めは優しかった母にも虐められてしまった。
「……」
 居場所がなくなったアヒルは、外の世界へと飛び出したが、そこでも虐げられ、場所を転々としている所に白鳥の群れがいるのを見付けた。
 真っ白くて、自分とは全く違う。とても眩しかった。アヒルは、あぁなりたい、仲間に入りたいと思うも、すぐに願いを捨て、寒い冬を一羽で過ごした。
 春になり、成長したアヒルは、再び白鳥の群れを見つけては、近付いて、僕は醜い、殺して下さい、と頭を下げて言った。しかし、あひるの子は驚く。水に映っていたのは、醜いアヒルではなく、一羽の美しい白鳥の姿だった。
 そうして白鳥だった子は、真っ白な羽を広げると、仲間逹と青空へ飛び立って行った。

「俺はこの主人公、孤独だと思う」
「……どうして?」
「元々一人だったのに、大勢の仲間の輪の中に、急に馴染めると思うかい?」
 勇輝は再び沈黙する。
「主人公が白鳥だったとしても、現実は、白鳥の中にも毛色の違うものもいるし」
 大輝は勇輝をじっと見て、にこっと笑う。
「勇輝はどっちなのかな?」
「……」
 怖くなったのか、涙は出ないが泣きそうな顔になっていた。
「ごめん、怖がらせた。大丈夫だよ、勇輝には俺がいるから」
 苦笑をしながら、抱き締める。
「……?」
「俺が勇輝の支えになるから、アヒルの子にはさせない」
「ほんと?」
「花は水をやると元気になるだろ?」
 大輝は、勇輝の支えになるなら何でもする、そう言った。
「兄ちゃん!」
「あまり大きな声を出すと母さんが来るよ」
 勇輝の頬に一筋の涙が流れ、眠りについた。

2012.07.13 完成
2015.11.15 加筆

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