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■本編01

 昔から弟の勇輝(ゆうき)は、いじめられる側で、大人しい性格な為に、発言も出来ず、いつも泣いてばかりだった。

「うわ〜男同士で手ぇ繋いでやんの」
「本当だぁ」
 勇輝と同い年くらいの近所の子供に冷やかされ、兄の大輝(たいき)と繋いでいた手を咄嗟に離す。
「気にするな、兄弟なんだ」
 大輝は繋ぎ直した。
「ホーモ、ホーモ」
「ホーモっホーモ」
 冷やかしはもちろん続いて、勇輝の表情は深く沈む。
「…………」
「お前らいい加減にしろよ……!」

 大輝の後ろに隠れては、周囲に怯えていた。元々、それは父にしていた行動だったが、離婚をしてもう父はいない。だから、今は兄である大輝がその役目を担っていた。

***

「ただいま」
「っ……兄ちゃん」
 大輝が帰ってくるなり、勇輝が玄関で待っていた。泣き止んでいるが、目を腫らしている勇輝に優しく問いかける。
「なんだい」
「抱っこ……して欲しい」
「いいよ、勇輝。おいで」
 よしよしと頭を撫でてから、抱き締めた。
 大輝が小学生の頃は、放課後は一緒に帰りながら慰めていが、今は中学に上がり、それは不可能になってしまった。だから慰めてもらいたいときは、玄関か二人の部屋で大輝の帰りを待つ。
「まった。もう、甘えたねぇ」
 母の声に勇輝はびくつく。男の子なら言い返すくらいしなさい、と理由も聞かずに母親はいつも呆れていた。
「……」
「大輝、あなたも甘やかし過ぎよ。勇輝に構ってると成長しないんだから」
「はは、大丈夫だよ。勇輝はゆっくり成長するタイプだから」
「そうかしら……? 大輝、あなたはまともでいてね?」
 まともでいてね、大輝に対しての母の口癖だった。
「うん、分かってるよ」
 苦笑をしながら、鼻をぐすぐす言わす、勇輝の頭を再び撫でてあげる。

 大輝もどちらかと言えば、大人しい方だが、ここぞと言うときには発言をして、相手を納得させる術を持っていた。しかし、弟は見た目、性格の所為で友達も出来ず、肉親である母にも優しくされず、可哀想だった。

 勇輝は悪くないのに……あの日の出来事の所為で。

2012.07.13 完成
2015.07.05 加筆

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