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青学学園中等部が見える丘に不二は立っていた。瞳を瞑り青い空を仰ぐ。ここ、東京では自然などほとんどない。もちろん不二が好きな海も不二が住んでいる家の近くにはなかった。何年も前には毎日のように海で駆け回っていたのに。水の冷たさが気持ちよくて、風を感じながらその風に紛れて香る塩の匂いが好きで何時間でも海を眺めた。水平線に吸い込まれて、水彩絵の具が滲んでいくような夕日が大好きだった。風、塩の香り、夕日、どれも不二が海を好きな理由。しかしそれだけじゃない。不二が海を好きなのは、いつもそこに佐伯がいたから。一緒に潮風を吸い込んで笑って走り回り、夕日に照らされた幼い横顔。

『夕日の光はね、人の心を潤す力を持っているんだよ。』

そう言って笑った佐伯の表情はとても澄んでいて、優しくて、いまだに不二の記憶から消えない。

不二は佐伯が大好きだった。幼馴染として。その頃はまだ、単純に幼馴染として、好きだった。今になってこの感情に気づくなんて思ってもみなかった。
自分が引っ越すことになって、東京に来て、佐伯と離れ離れになって気づいた感情。青学に入って二年経ってはっきりと気づいた想い。今更伝えたいと思ってももう遅い。「好き」だなんて。「愛しい」だなんて。なぜ引っ越さなければいけなかったのだろう。なぜ一緒にいたときに気持ちに気づかなかったのだろう。

青春学園へ入学したことを後悔しているのではない。六角中学に行かなかったことを後悔しているのではない。佐伯と離れ離れになってしまったことを後悔しているのだ。千葉に帰りたい、そう思ったことはない。でも佐伯に会いたいと思わないことなどなかった。

「………佐伯。」

そっと不二は瞳を開く。夕日の橙と夜空の藍が入り混じってグラデーションを作り上げている。それが何とも哀しい。それがなんとも苦しい。

「ねぇ、佐伯。会いたいよ。」

『今までありがとう。また会おう。』そう言った佐伯の笑顔が頭から離れない。好きだよ、そんな笑顔も。ずるいよ、最後まで笑顔を見せるなんて。そのとき泣いていたのは紛れもない不二自身だった。涙を零した不二を佐伯は優しく笑いながら頭を撫でてくれた、そのことを不二は忘れない。東京と千葉。中学生の不二にとってはその距離は果てしなく遠くて、佐伯に会うことも許されない。

風が通り過ぎる。都会の香りしか含まない暖かい風が。




不二と佐伯は再会する。
外の時を不二はまだ知らない。

それは運命か、はたまた偶然か。




fin...




というわけでサエ不二でした。
幼馴染っていいよね!!

アンケートで意外と人気のあったサエ不二をここで投下してみる(アンケートまだ途中ですが←こら)


私的に引っ越ししたのは不二だと思うのですがどうなんですかね?
アルバムで不二、裕太と海いるし…。
そう考えると子不二が子佐伯とおじいの遊具で遊んでるそんな微笑ましい姿って萌えるじゃねぇの!って萌えるのは私だけですか←え


しかし最近書く小説まったく不二がしゃべらない…。どうしたものか…ory


あきゅろす。
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