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夜が産み出した風が頬を撫でた。まだ春になるには早いのだろうか。日中は暖かな日差しが降り注ぐも、さすがにこの時間、深夜にもなると風が冷たい。冷たい風は幸村の漆黒に混じりそうな藍の髪をゆらゆらと靡かせる。また「体に悪いから…」なんて母さんに怒られるかな、なんてことを考えながら幸村は空を見上げる。
月が煌々と街を照らす。漆黒の世界が光を失わないよう光りを街に届け続ける月。太陽の光を受けて、まるで鏡の役割を果たすような月。その光がどれだけ頼ることが出来るだろうか。幸村は小さく苦笑を浮かべた。

『え?なに?』

聞こえた愛しい声になんでもない、と笑み混じりに答える。

『気になるな。なんかあるなら言ってよ。』
「なんでもないって言ってるだろ?周助は気にしすぎなんだよ。」

受話器越しの会話。携帯を握り直したらこつん、とストラップが携帯にぶつかる音。白い携帯に青いストラップ。Sという文字の付いたそれはまだ真新しく、携帯に馴染んでいない。携帯に合わせて買ったわけでも、ましてや幸村の趣味で買った訳でもないのだから当たり前だろう。それでも、この受話器越しの、不二の携帯にSの文字の付いた黄色いストラップが付いてると思うとどうにもくすぐったい、優越感に似た感情が幸村の心をくすぶる。

むー、と拗ねたような返答の不二の言葉にまた笑みが溢れた。

『精市の馬鹿。』

すると聞こえたのはそんな悪態で、なんでこんなに愛しいのか、と幸村は顔を綻ばせる。

「心外だなぁ。」

今顔を見られていたら愛しくて堪らないのだと不二に伝えられたかもしれない。だけど見えていないのだから仕方がない。いや、いっそ見えていなくてよかったなかもしれない。こんなに好きで仕方がないだなんて言ってしまったらそれこそなんて言われるか分からない。

『僕に隠し事なんてするからだよ。』

未だに拗ねたままの不二。まるで子供みたいな事を言うものだから、ついいじめたくなってしまうのは幸村の性だ。

「本当にかわいいな、周助は。」

耐えきれなくなって呟けば『はぁ?』と間抜けな声が聞こえた。

『な、なに?急に…。』
「いや、そう言いたくなったんだよ。」

恥ずかしさで顔を赤くしているであろう不二を想像して、幸村はまた小さく笑う。幾分か慌てたような声が、それが事実なのだと知らせてくれる。

どうしてこんなにも愛しいのかと幸村はよく思う。出逢いが特別だった?運命を感じた?誰よりも側に居てくれた?どれも違うのに。こんなにも愛しい理由。それは…。

「周助、星が綺麗だよ。」

見上げれば星空。瞬くそれらは何億という時間を経て地球に届いているのだろう。

『残念ながらこっちはあんまり見えない、かな。』

電話越しに苦笑。そんな苦笑の音に幸村の口元は緩む。

「そっか…。残念だな。」

そんなこと微塵も思ってなどいないけれど。本当は他の事で頭がいっぱいなんだけれど。

不二が愛しくて仕方がないという事実と現実に心が満たされる。唐突な会話にも真面目に答えてくれる不二に、愛しさが込み上げる。素直に好きだと。素直に愛していると。どうしたらこの気持ちを伝えられるだろう。言葉にするにはあまりに難しくて、けれど言葉にしないでいるのはもっと難しくて、幸村は星空を見上げながら困ったように微笑んだ。

「参ったな…。どうしてこんなに好きなのかな。」

すると聞こえたのは小さな笑い声。幸村が愛しいと思う暖かい音。

『それは僕が君を好きだからだよ。』

甘いその声に一度驚いてきょとんとする幸村だったが、すぐにそれは微笑みへと代わり、「そうかもしれないな」と一言呟く。


淡いアルトの声は耳に心地よかった。


Fin...



という訳でリクエストの幸不二になりました。いかがでしたでしょうか?

正直ひたすら甘いというリクエストにこたえられているか不安で仕方がない天海です…。
ど、、、どうですか…???←


そして大変お待たせしてしまっていてすみません。
うぐうぐしてひれ伏す限りでございます…。ぼぼん。
甘いってなんだ甘いってなんだとか考えながら書いていたらこんな事に…。

しかし、あれですね。
幸不二って可愛いですよね←結局

こんなものになりますが、煮るなり焼くなりしてくだされば幸いです。

それではそれでは、本当にリクエストありがとうございました!

焼き芋様のみお持ち帰り可


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