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風が赤い髪を揺らす。猫っ毛のそれは擽ったそうにユラユラと揺らめき、フワリと定まらずに動きを止めた。

「なぁ。」
「はい?」

その髪の持ち主──丸井が顔を向けずに声を掛けたのは茶髪の眼鏡の男。呼び止められ、微かに不服そうに眉を潜めた。

「可愛いって思わねぇ?」

唐突な質問に付いていけなくて、言葉を発せずにいる。しかし丸井の視線が動かない事に気付くと、それを辿ってとある人物を捕らえた。

「……仁王くんが、ですか…?」

理解し難いとでもいうように片眉を吊り上げるは柳生。仁王雅治という存在は猫っぽくて気まぐれで、自分勝手だという認識しかされていない。 まして可愛いなどという選択肢があるだなんて思ってもみなかった。

「あーーーいや。仁王も可愛いと思うけどよ。」

うーん、と少し首を傾げて、丸井はやっと柳生に視線を送った。そして持ち前の明るい笑顔でニヤリ、と笑う。

「仁王に変装した柳生が、さ。」
「なっーーー!」

思わず目を見開いた。テニスをしている時ならともかく、していない時に柳以外に自分たちの入れ替わりに気付く人物がいるとは。そんな柳生──否、仁王を差し置いて丸井は悪戯にガムを膨らませてみせた。ぷくーっと膨らんだソレは割れる前に再び丸井の口内に含まれる。

「へへっ、天才的だろィ?」

言葉の出ない仁王に得意気にウインクなんてして見せる。してやったりとでも言うように肩を揺らして笑いを堪える丸井の姿は実に楽しそうだ。

「悪ィけど…。柳生の事ちゃんと見てんだよ。仁王よりもな。」
「……言ってくれるのぅ…?」

柳生の仮面を被ったままニヤリと企むように目を細めて仁王は丸井を見下ろす。相棒は譲らないと。いや、もしかしたら相棒と言うよりももっともっと深い…。

「あ、んじゃあ本人に聞いて来ようぜ?」
「………は?」
「柳生は誰を見てるのか聞いて来ようぜって言ってんだよ!」
「おい、ちょ……!」

慌てふためく仁王に構わず丸井が走り出す。向かうは仁王の姿を纏った柳生。柳生ーー!と騒ぎながら走ってゆく丸井に悪態など無駄だったと諦めたような柔らかい笑みを溢して仁王も丸井の後に続いた。




きっとこれは挑戦状。


負ける事は許されない。


Fin...?



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