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助けてくれ。



泣いている。



縋るように。



助けてくれ…。



僕はそれに気付きながら気付かないフリをする。



そしてまた一回り、針を巻き戻した。





『恋を刻む瞬間』












「何見てるの?」

フェンス越しに試合を見ていたら声を掛けられた。栗色の細身の同級生。同じ部活に所属しながらも、そこまで親しい訳ではなかった。どちらかと言えば大石や乾との方が関わりは深かったし、人を惹き付けるような笑このみは苦手だった。

「手塚くんも、早く先輩たちに交じって試合したい?」

互いに緑のジャージ。まだあの青と白のジャージを着る事はない。羨ましい、と思った事はない。ただ羨ましくない、と思った事もなかった。

答えられない俺に向かって苦笑を漏らし、不二はフェンスの向こう側に視線を送った。

フェンスの向こうには他の学校と練習試合をする先輩たちの姿。見る事は時に練習するよりも学ぶ事が多い。しかし不二は直ぐに視線を試合から外した。

「キミが出てない試合見てもつまらないね。」

数秒しか見ていない試合でなぜそう思うのかが分からなかった。しかし俺はテニス事態が楽しくないとさえ取れるような台詞に対する怒りよりも、なぜ試合がつまらないと分かったのかという思いが強かった。

確かにこの試合は完璧なる敗北。実力も精神力も体力も全てが全て青学に足りていなかった。それを瞬時に判断した彼は、やはり天才と噂されるだけはある、とそう思った。



「………ぁ…。」
「……………?」

小さな声を漏らした不二の視線は俺を越えた一点に定まる。不思議に思い振り替えるとソコには1年でありながら対戦校の主力になっていた三人の男の姿が─────。








「何見てるの?」

フェンス越しに試合を見ていたら声を掛けられた。栗色の細身の同級生。同じ部活に所属しながらも、そこまで親しい訳ではなかった。どちらかと言えば大石や乾との方が関わりは深かったし、人を惹き付けるような笑このみは苦手だった。

「手塚くんも、早く先輩たちに交じって試合したい?」

互いに緑のジャージ。まだあの青と白のジャージを着る事はない。羨ましい、と思った事はない。ただ羨ましくない、と思った事もなかった。

答えられない俺に向かって苦笑を漏らし、不二はフェンスの向こう側に視線を送った。

フェンスの向こうには他の学校と練習試合をする先輩たちの姿。見る事は時に練習するよりも学ぶ事が多い。しかし不二は直ぐに視線を試合から外した。

「キミが出てない試合見てもつまらないね。」

数秒しか見ていない試合でなぜそう思うのかが分からなかった。しかし俺はテニス事態が楽しくないとさえ取れるような台詞に対する怒りよりも、なぜ試合がつまらないと分かったのかという思いが強かった。
確かにこの試合は完璧なる敗北。実力も精神力も体力も全てが全て青学に足りていなかった。それを瞬時に判断した彼は、やはり天才と噂されるだけはある、とそう思った。



「………ぁ…。」
「……………?」

小さな声を漏らした不二の視線は俺を越えた一点に定まる。不思議に思い振り替えるとソコには1年でありながら対戦校の主力になっていた三人の男の姿があった。



「…………?」


デジャヴだろうか。こんな状況が前にもあった気がする。考え込んでしまった俺の前にクスリと微笑む男が手を伸ばした。

「初めまして、だね。手塚。僕は幸村精市。よろしく。」

何をよろしく、なのだろうか。

しかし疑問を抱きながら俺は彼の手を握った。きゅっと掴まれた手から何か懐かしさと、警告と、様々な感情が乱れた、、そんな気がした。








「何見てるの?」

フェンス越しに試合を見ていたら声を掛けられた。栗色の細身の同級生。同じ部活に所属しながらも、そこまで親しい───。



おかかしい。

明らかに。


先ほどもこんな状況ではなかっただろうか…?


「手塚くんも、早く先輩たちに交じって試合したい?」

不二の青い瞳が俺を捕らえる。まるで逃がさないように、逃げないように俺を監視しているかのように。

「キミが出てない試合見てもつまらないね。」

瞬間的に外れた視線に気を緩めたのも束の間、直ぐに視線は戻ってくる。笑みの形に弧を描く瞳がヤケに芝居染みてみえる。何かを企むようなソレ。




いや、違う。


不二は何も企んでなんかいない。



「………ぁ…。」
「……………?」小さな声を漏らした不二の視線は俺を越えた一点に定まる。

そう、振り返るとソコには、青い髪の男。




















カチ、…



カチ、…



カチ、…



規則正しい音が響く。助けてくれと告げる音。

「精市、コレ欲しいな…。」
「それを、かい?じゃあ同じヤツ買ってあげるよ。お揃いだな。」

軽い額への口づけ。その口づけに愛がない事は分かってる。それを受けとる側にも愛がないのだから。

僕の手の中で小さな時計がカチカチと音を立てて震えている。

「…周助、続きを話してくれないかい?」

それより、と続きを催促する彼。中学時代を頻りに聞きたがる彼にたまに話す事がある僕の過去。10回に1回くらいの割合で口にする。
でもそれは僕の過去を知り合いという純粋な思いとは違う。




助けてくれ。



どうにかして助けたい。



だけど方法が分からない。



君はもう気付いた?



気付いた時にはもう、全てが手遅れ。



「…うん。それでね、その時手塚が…。」



繰り返す




何度も何度も。




君は決められた空間の、決められた針の動きに合わせて。




僕は僕自身が経験した過去を辿りながら。





彼の目的はそう、










手塚国光のスベテを手に入れるという事














Fin...





あきゅろす。
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