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ソラのムコウのアオのムコウにはなにがあるのだろうか
「アオノムコウのユメノセカイA」
この世界に来てから何日たっただろう。いや、何ヵ月?何年??
曜日感覚がまったくない。この世界の空はいつも澄んだ青色で、紅や藍に染まる事がないから。いつ起きても真っ青なまま。
不二も俺が起きると既に起きている。いつ寝ているのかさえ良く分からない。そして俺が目を覚ますといつもの様に微笑みながら近寄って来て俺の事を聞いてくる。
ムコウのセカイの事。
部活の事
学校の事
家の事
俺は全て話す。今さら何を隠す必要があるだろうか。コイツは不二であって不二でない。所謂不二なんだ。
不二は俺の事をほとんど知っている。ならばこの不二にも教えても言いと、そう思うから。
でも俺が不二の事を聞いても何も答えない。もしくはパニックを起こして質問どころでなくなるかどちらか。
しかし些細な質問になら答えてくれる事もあった。その些細な答えから推測するに、ここには不二意外誰もいないらしい。たまに誰かが来たりするらしいが、俺がいる間は誰も来たことがない。そして不二にもこの世界の事はよく分からないらしい。気づいたらここにいた、と切なげな表情で言っていたのは先ほどの事。
「……………」
時折手を不二に握られている感覚になるときがある。手を見ても俺の手に触れるものなど何もない。声が聞こえなくなった変わりの触られている感覚。
泣きたくなる
理由は分からない。ただ視界がボヤけるのを必死で堪えて布団にくるまる。そう言う時こそ不二は俺の様子の変化に気づき『泣いてもいい』と頭を撫でてくれる。
「…………手塚?」
ぼーっと外を眺める俺を心配するような顔で見てくる。俺と同じぐらいの身長。不二だと思う反面不二でないと思うのはこうゆう時。
「どうした?」
「………なんでもないよ」
普段通りの口調で問いかければ安心したような笑顔を浮かべながらピアノを弾きに戻っていく。
部屋の隅に腰掛け音色を聴く。
切ないメロディ
出会って少しは優しく明るい音色だったハズなのに、また最近切なさや絶望が混じってきた。
泣きたいのか、泣かせたいのか。
・・
「…………ん……」
「………おはよう」
ゆっくりと瞳を開くと不二が隣に座って微笑み掛けてきた。
寝てしまったらしい…。
最近は気づくと寝ている事が多い。眠いと感じる事はほとんどない。しかし寝ている。
不二に視線を移せば苦笑を浮かべながら首を傾げる。
多分不二は理由を知っている。でも言えない。いや、言わない。こうゆう表情をする不二はいつも何かを隠している。自分の都合の悪い時には何も言わないのはこちらも向こうも変わらない。
「もう少し、寝てていいよ。」
ただそう言えば細い指で視界を隠される。
「今寝たから……だい……じょ……」
「……………」
・・・・
手塚…………
戻って来て………
じゃないと僕は……
僕は……生きられない………
・・・・
「………!!!」
…………夢……?
妙にリアルな夢だった。不二が泣いていた。普段微笑んで俺をからかって遊んでいる不二が、俺を呼んで。
「………どうしたの??」
気付かぬ内に頬を伝った冷たい俺の雫を拭いながら顔を覗いてくる。
「何故泣いて………」
違う……………
何故泣いていたのかと問い掛けようとするも泣いていたのは目の前にいる不二じゃないと分かる。
蒼色の瞳、幼い顔立ち、僕…………
「不二………」
泣いている。俺がいない事で。
もう、限界だと、声も手の感触も無視した俺への最後のメッセージ。
立ち上がる俺の手を目の前の不二が引き留める。瞳で伝えられる。行かないで、と。きっと俺の知る不二なら言葉で言ってくる。でも、お前は違う。
「帰らなければならない。」
「どこに……?」
「元いた場所に……」
「………………」
間の空いた焦れったい会話。沈黙を生みながらただ風が吹く。風の通るハズのない部屋の中に。
その沈黙を壊したのは不二。
「オレの側にはいてくれないの?」
「……………」
「オレじゃダメなの!?ねぇ…!!」
すがるような漆黒の瞳。溢れでる絶望と涙は俺には拭えない。
そっと掴まれた手をほどけば謝る変わりに頭を撫でてやる。いつもお前がしてくれたように。
好きだ
お前の事は
でも愛するのは
お前越しに見た本当のお前
蒼い瞳をした不二
すまない
「帰らせてくれ」
───パリン───
何かが崩れる音がした。ガラスが割れるような小さな哀しい音。白く染まる世界の中、どちらかは分からないが不二の声がした気がした。
■■■
「て………づか………!手塚!!」
ボヤけた視界の中、不二が俺に抱きついてきた。微かに痛む体と頭。
状況が良く読めないが、とにかく俺は病院にいるらしい。ベッドに横たわる俺の傍らには不二が涙を溜めている。
「………………」
言葉を発しない俺に不思議そうな心配するような顔を向ける。そしてただ簡単に教えてくれた。俺は事故にあってここにいるのだと。
「夢を……みた………」
「夢………どんな…?」
唐突な俺の発言に首を傾げる不二。しかし疑問に思いながらも微かに嬉しそうな色が見える。
「…………分からない。」
………なんの夢を見ただろうか。
思い出そうとするも何かが邪魔をする。果たしてあれは夢だっただろうか…。
“あれ”…とは??
頭を軽く抑えながら考えても思い出せない。そんな俺を見てか優しい笑みを浮かべれば、抱き寄せられる。
「ごめん………いいよ、無理に考えなくて。今度“僕”だけにそっと教えて?」
優しく囁かれた不二の言葉に涙が溢れる。やはり理由は分からなくて、でも何故か生きているような気がした。
触れあう鼓動と涙と
そして唇
いつか思い出せるだろうか、何かを
──それから数年──
「久しぶりだな、不二」
見晴らしの良い丘。青く広がる空。ぽつりと立つ四角い石の塊。
手に持った花束が風に靡いては花びらを散らして行く。
不二が他界したのは去年の事。原因は不明。ただ、日に日に弱っていく体と弱くなる瞳に死が近い事を悟ったのは俺たち二人だけではない。
それでも希望を捨てないヤツラばかりだった。不二も弱る体に負けないと最期まで笑顔を浮かべていた。みんな不二の回復は当たり前だと思っていた。
俺以外は
俺は分かってしまった。不二の死は確実なのだと。姉にそろそろ成人したんだから、と言われ直した一人称。遺伝だったのか中学を過ぎた辺りから段々と黒くなる瞳、それと同時に伸びる身長。
夢に見た不二を思い出した。段々と変わる不二を見ていて。
「お前だったんだな、あれも」
涙の変わりに生まれた蒼い風はどこに向かうのだろう。
今日の天気は晴天。約束通りお前に話そう。
あの日、俺が夢と言ったまた別の世界の話を。
まずは蒼く広がる空を見た所から。
涙が溢れた時は暫くそっとしておいてくれ。
多分涙なしには語れない。
俺の気持ち、願い、誓い、お前との日々。
捧げた俺の全て
Fin
とりあえず意味分からんものを少しだけ分かるようにと続きもの(爆)
しかし……よくわからん!!
これだから私がシリアス書くとおかしくなりそうっていわれるんだ(涙)
精進シマス……
そして、近々シリーズでもういっこくらい小説出しますー多分。
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