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手塚の家にひとつの大きな大きな段ボールの荷物が届いた。宛名はなし。不審に思いつつ段ボールを開けると、そこには『HAPPY BIRTHDAY』と書かれた紙と小さな小さなひとつの青い靴が入っていました。







『箱詰めチルドレン』










「てづかくん、あそびましょう。」

眼鏡を掛けた少年が俺に話掛ける。短パンに上着を確りと入れて、茶色い髪を確りと七三分けにした、いかにも育ちのいい少年。それでも彼は無邪気に笑って俺の腕を引っ張った。

「あ、俺もいれてくれるん?おおきにー。」

と、そこに入ってきたのは髪の長めの大阪弁の少年。彼も眼鏡を掛けてはいるが、俺の腕を引っ張る茶髪の彼とは対照的だ。

「貴方はさそっていませんよ。」
「ええやん。たのしもうや。」

言い争う二人の近くにいながら俺の視線はある場所に定まる。

まったく会話に参加しようとしない銀髪の癖を持つ少年。箱庭のようなここに来て、一度も彼とは話をした事がなかった。

興味があった。

幼稚園の時の容姿。周りも皆俺と同じくらいの年齢だ。何人かいる人物たちの中で、誰とも交わろうとしない銀髪の彼に。

「あん?」

視線があったかと思えば威嚇するような口調。気まずくて視線を反らすとふん、と彼も視線を外したようだった。

「あとべー。」
「んだよ。」

口の悪い声がよく聞こえた。目の前でズボンに上着を入れろと言い争っている二人の喧嘩よりも、遠くにいる彼の声。ひとりの青い帽子の少年が駆け寄り、何か楽しげに話している姿にどうにも惹かれる。

「てづかくん!!」
「………?」

呼び掛けられ、そこで初めて俺の思考は目の前の二人に向けられた。言い争っていたはずなのに、そう考えながら彼らを見比べる。

「聞いてやー。ひろしが母さんみたいなこというんやで?」
「なれなれしく呼ばないでくださいっ!」

放って置いたら殴り合いの喧嘩でも始めるのではないかという二人。既に日常のような二人の言い争いもそろそろ慣れてきた。いちいち慌ててやるほど簡単な思考もしていないと自覚している。

「………そうか。」

ただそれだけ呟いた。すると二人の呟くようなため息。仕方ない、と脱力したような。


こんな日常を繰り返して。余計な事など考えない。特に執着するものがないというのもあったが、別に満たされていない訳でもなかった。





「………ん。」
「………これは?」

ある日、唐突にあとべから袋を渡された。それまで全く話した事がなかったのに、急に渡された青い袋。開けろ、と催促され仕方なしに袋を開ける。

そこには青い靴が一組。

「…………。」
「………なんだよ。」

まじまじとあとべを見上げるて照れているのかふん、と顔を背けた。

「なんでこれを…?」
「……………たんじょうび。」

ぶっきらぼうに告げられた台詞。確かに誕生日は近かったがしかし二週間以上後の話だった。意味が分からない。何故今なのか。何故靴なのか。

「…もんくあるなら言えよ。」

ツン、とした台詞。俺はじっと見つめた後、ぽつりと呟いた。

「あおよりみどりのほうが好きだ。」
「………。」

それにしても有り難かった。俺は靴を持っていなくて普段は裸足でいたから。ぺたぺたという地面と足の擦れる音が大嫌いで、コツコツと靴の音を鳴らしながら歩く友人たちが羨ましかった。

「……じょうだんだ。ありがとう。」

素直に言葉を呟けば、あとべは意地を張ったように顔を背ける。そんな態度が逆に素直さを表しているような気がした。







しかし靴を貰ってからすぐ、俺たちの世界に異変が起きたんだ。まるであとべが計っていたように。青い帽子の少年がいなくなった。あとべはまるで当たり前のような顔をしていたが、俺たちには理解しがたかった。そして々と時間は迫っている事を俺たちは知らない。

「あとべ!どうゆうことかしっとるん?」
「何のはなしだ。」

あとべに言い掛かるおしたりとやぎゅう。その後ろに俺。



カチ、カチ、カチ



不意に小さな小さな時計の針の音が聞こえた。俺以外誰にも聞こえていないようで誰も気にしてはいない。







カチ、カチ、カチ、








迫る、近づく、運命の針。



「あとべくん、なんでもいいからしってることをおしえてください。」



「なにもしらねぇっつってんだろ!」



そして、


───カチリ───



と音が止まる。




瞬間、世界が真っ暗になった。何も見えない真っ暗な狭い狭い空間。

「え、な……なんです、か……?」
「まっくら…や、なぁ……?」
「せまいのきらいなんだよね。」
「………。」

やぎゅう、おしたり、顔の見えない少年、あとべ、と続いて声が聞こえた。あとべに関してはため息だったがしかしよく知ったため息。

「………たんじょうび…。」

呟いた俺の言葉にその空間がシン、と冷たくなった。

「たんじょうびだな?あとべ。」
「…………あぁ。」

俺たちの会話に着いてこれなかったのか、おしたりが意味の解説を求めてくる。ひとつ、呼吸を置いて、俺は口を開いた。

「俺たちのたんじょうびはみな、おなじ月なんだ。だからと言ってなにがわかるってわけでもないが……。」
「送られんだよ。だれかんとこへ。生まれて6年目のたんじょうびの月にプレゼントとして送られる。」

全てを知っているのかも、これから何をするのかも分からないまま。

「……とりあえず、ぬけだすぞ…。はこづめにされてたまるか。」




















「…………!!」


────今の、記憶は───…。


段ボール前で俺はただただ思考を巡らせた。気付きたくなかった過去を見てしまったような、そんな感覚。
しかし俺は手塚国光で、しっかりこの家に生まれたハズ。兄も、父も、祖父も、母もみな家族として扱ってくれていたハズ。

跡部なら何か知っているのだろうか…?

思いながら電話を取った。跡部の家に、


そう。跡部の家に掛けたハズだったんだ。



しかし聞こえた台詞に耳を疑った。


『お電話ありがとうございます。○○カンパニー○○でございます。』


……妙な違和感…。


『本日は何人の箱詰めチルドレンをお求めでしょうか?』

「ーーーーーー!」



跡部は、いったい何を知っているのだろうか。何を、どこまで、どうやって?















『あとべ。』
『あん?』
『かたほうクツ、なくしてしまったみたいだ。』
『しかたねぇな。こんどはみどりのやるからがまんしろ。』
『…………あぁ。ありがとう。』


手を繋いだ二人の少年は今日もどこか居場所を求めてさ迷い歩く。



Fin?















後書きという懺悔


誕生日なのにこのテンションは一体…。
一応、10月生まれ総出演で一纏めにしてみました。
そして暗闇の中の顔の見えない少年は氷帝の滝だったりします。彼もちゃんとした10月生まれ(友人情報)。でもキャラが分からないからこれぐらいしか出せなかったのごめんね。


一応手塚誕生日お祝いです。
いろいろホラーっぽくしたかった天海ですが、どんなになるかと思えばこんなになりました。

ちなみにタイトルになった『箱詰めチルドレン』ですが、某螺旋漫画『ブレー●チルドレン』⇒『●泉チルドレン』⇒『箱詰めチルドレン』という素晴らしき空耳から出来たタイトルです。むしろタイトルが先に出来ました。タイトルから内容を考えました←


跡塚にしたかったんですが……我が家の跡部様はあまり活発に動いて下さらなくてうぐうぐしてました。跡塚になったかし……ら……??

さて長くなりましたがここらへんで。
はっぴいばーすでー!!





あきゅろす。
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