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「暑くなりましたねー。」
「温暖化だからな。」
休日の学校。もちろん俺たちは部活で学校に来ているんだけれど、まだ俺と宍戸さん以外は誰も来ていない。それも午後練習なのに二人して午前から来てしまっただけなのだが。
折角だからと言って軽く打ち合いをして午前中を過ごした。近くのコンビニで昼ご飯を買って、食べ終わって、これからどうするかとそんな状況。
外の風が心地好い。暑い空気に冷えた風は俺の髪をすり抜けて宍戸さんの帽子を奪って通り過ぎる。
「やべっ!」
少し離れた場所に落ちた青いトレードマークの帽子を拾い軽く叩く。そんな何気ない宍戸さんの行動になせか頬が緩む。
「何笑ってんだよ。」
「何でもないです。」
互いに顔を見合わせて一呼吸。堪えきれなくなってお互いに吹き出す。やっぱり好きだな、俺。宍戸さんの事。
「ほら。」
頭の上に置かれた帽子をしっかりと被る。宍戸亮です。と宍戸さんの真似をして言ったら激ダサ、なんて笑われた。ちょっと寂しさを覚えました。
「あ、じゃあ…。はい。」
帽子の代わりにと首から下がる十字架のチョーカーを外して宍戸さんに付けてあげた。宍戸さんは少し頬を赤くしたけど視線を外しながらサンキュー、と一言。こんな時間が幸せだと思う。多分俺も相当顔が赤い。
「…好きです。」
「……あぁ、好きだよ。」
ぐいっと引き寄せられたかと思えば目の前に宍戸さんの肩。暖かい腕の中に言葉が素直に出た。互いの鼓動が聞こえてどうしたらいいか分からないのに、どうしようもなく嬉しい。
「はーい。ごちそうさん。せやけど退いてくれんと部室入れんから堪忍な。」
「なっ……!」
「忍足せんぱ…!!」
ぞろぞろと後ろから正レギュラーのメンバーが続いてくる。
「え、何で…えぇ!?」
「てめぇら……見てやがったな…!!」
「部室の前でいちゃつくのが悪い。」
「同感。」
「同感。」
「同感。」
忍足先輩に続いて跡部さん、向日先輩、日吉までもが同感の言葉。少し、いや……かなり恥ずかしい。
一体いつからいたんだろうか。
「よし。部活やるからてめぇら準備しやがれ。」
「スルーしてんじゃねぇよ!!」
からかう忍足先輩と向日先輩を筆頭にスルーし続ける跡部さんと日吉。照れ隠しなのかそんな4人に絡む宍戸さん。
4人の俺たちに向けられる暖かい視線が嬉しい事は秘密です。
Fin
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