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「不二、ゲームをしないかい?」
「……ゲーム…?」


『Adep management』


「…ふ…っ、……んぁ…」

籠ったような甘い吐息が室内に響く。白い肌に指を這わせて、イジらしいほどゆっくり突き上げて、確実に堕としてゆく。

「鳴かぬなら……なんてよく言ったものだよね。」

そう、哭かないなら哭かせばいい。少しだけ旋律を早めるとそれを望んでいたかのように声が高くなる。でも不二は自分から望んでいた事を口にはしない。それはこのゲームの敗北を意味するから。

『相手を愛した方の負け』

もちろん求めたりするのも同じ。だから不二は絶対に自分から求める言葉を口にする事はない。その前に俺がこのゲームを仕掛けた時点で不二に特別な感情を抱いている事は不二も気付いているハズ。なのにそれを指摘せずに乗ってきた。お互い口にしたら堕ちる事は分かりきっている。

「…ぁ……っ、ん……」

何か言いたげな唇を噛み締める姿が愛らしい。でももし堕ちたとしても、俺は逃げ道を用意してるだろ?

■■■


「…可愛かったよ?不二」
「………。」

そんな事を言われても何て返していいか分からない。否定しても更に否定されるだけ、だからと言って肯定するような素直な人間でもない。

「負けたからって拗ねる事ないだろ?不二が不利な事なんて初めから分かってたじゃないか。」
「……拗ねてなんてないさ。」

否定しているのにクスクスと笑われるものだから肯定しているような気分になる。それがなんとも憎らしい。

分かりきっていた事。そんな事ボクだって分かってる。分かってた。でも『ヤる前から逃げるなんてしないだろ?』なんて余裕の表情で言われたら断る事なんて出来ない。

「愛してるんだろ?」
「……。」

不意にも愛してるだなんて口にした自分が理解出来ない。思っている事と口にした事とが変わる。

らしくない……。

そう幸村が言ってくれたらどんなに楽だろう。らしくないの一言で片付くなら、こんなにも不利な状況ではないハズ。

逃げ道は、ある……。ただ、それは…。

ちらりと幸村の紺の瞳を覗けば言葉を待つかのように微笑を浮かべてくる。
全てを見透かすようなこの態度が嫌い…。

「…仕方なくだよ。仕方なく愛してあげたんだ。」

完全なる敗北発言。ただ幸村の手の内から逃げるための唯一の発言。ここまできっと幸村の予想通りだろうけど、ここからは予想などしていないだろう。不意を付くように軽く唇を重ねる。わざとらしい笑顔に対応するのは目を見開く幸村の顔。

「嫌いだよ、キミなんか。」

大袈裟にため息を着くと苦笑される。ボクの嫌いなんてそれぐらいで済むほど。




嫌い。だけど好き。

嫌い。だから好き。


Fin...




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