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素直じゃない


今日も戦があった。
まぁ、攘夷戦争の最中だから当たり前だが。
しかし今日は、その当たり前の中にいつもと違うものがあった。
それは…


「いててててっ!」

「こんくれぇ我慢しろ」

「いてーもんはいてーの」

「…ふん」


戦場から拠点としている寺への道のりを高杉が左脇腹を押さえた銀時を支えながら歩いていた。
本来なら二人の隊の生き残りも一緒に帰るはずだったのだが、敵にまだ仲間がいたらしい、撤退中を狙われたため、二人は自分たち以外の仲間を先に帰し天人と一戦を交えたのだった。
その最中、銀時が怪我をした、それも高杉を庇って、だ。
前日に降った雨が原因で出来た泥濘。
それに足を捕られ、高杉は一瞬体勢を崩してしまった。
ハッとなった時には遅かった。
目の前に迫る刀。

斬られる――


『高杉ぃいっ!!!』


そう思った瞬間聞こえた叫び声と身体を襲う衝撃。
がしかし、肝心の鈍い痛みがないことを不思議に思った高杉が視線を上げると、そこには鮮血に染まる白い男の姿が。
それが返り血だけではないことは直ぐに分かった。
よく見ると敵の刀が左脇腹を貫通している。


『銀時っ!?』


ここではじめて、自分が銀時に突き飛ばされたのだと理解した。
つまり、庇われたのだ。

その後直ぐに持ち直した高杉によって残りの天人は全て片付けられたのだった。


「……ちっ」

「え、なに、舌打ち?!銀さん捨て身で庇ってやったのに?!」

「うっせぇ誰が庇ってくれなんて言った、あんくれぇどうにか出来た」

「…はいはい」


素直じゃないねぇ晋ちゃんは、なんて呟いた銀時の頭を殴る。
もちろんグーでだ。


「何すんだ!いってぇなあっ」

「てめーが悪い」

「何だと!バカ杉アホ杉ちび杉!」

「いっぺん死にやがれくそ天パー!」

「うわっ?!」


頭にきた高杉が支えていた腕を放すと、ドサッと銀時が地面に倒れた。
衝撃が傷に響いたのだろう、腹を抱えて踞りうーうー唸っている。


「ふん、ざまーみやがれ」

「…てんめぇ」


さぞかし愉快そうに見下ろしてくる高杉を、銀時は涙目で睨み上げた。


「なっさけねーな、白夜叉ともあろう男が」

「…誰のせいだと思ってやがる」

「さあな」

「ちくしょー覚えてやがれ…っ!!!」


銀時はぐっと唇を噛み締めた。
それを見た高杉は呆れた顔をして、銀時に近付き手を差しのべた。


「そんだけ元気がありゃ大丈夫だろ」

「……は?」

「ほらさっさと立ちやがれ、おいてくぞ」

「うをっ!?」


再び肩を貸すと高杉は足早に歩き始めた。


「お、おい、速いって!」


それについていけない手負いの銀時は慌てて抗議するも、当の高杉は知らん顔だ。
仕方なく諦めて歩調を合わせる。
今更痛いと言ってもどうせ受け付けてくれないのだとわかっているから。


「なんなの、お前」


銀時は溜め息をついた。


「…んだよ、早く帰んだろ」


こちらを見ず、前を向いたまま答える高杉。
一瞬言葉の意味が理解できずぽかんとした銀時だったが、次の瞬間いつものやる気のない表情に戻ると、小さな溜め息を漏らした。


「…やっぱり素直じゃない奴」

「あ゛あ…?」

「何でもねーよ」


銀時はこっそり笑うと、不服そうな高杉に体重をかけた。
だが、相手はそれをさして気にした様子はない。
そんな男にもう一度笑うと、二人は仲間の待つ所へと進んでいった。




END。
(2009/10/21)
――――――――――

あとがき。

高杉は銀ちゃんが心配だから早く帰って手当てがしたい、という話でした。
二人とも素直じゃないんですけどね。
この二人の絡みが大好きです。
本編で早く絡んで欲しいです。


あきゅろす。
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