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ゴミ箱
嫌われ者
薄暗い路地裏
一人によってかかって殴りかかっている集団があった。
皆一様に笑顔である。
人間を貶める快楽に目覚めた少年達の行為はエスカレートしていく。
薄目で見上げた彰の目に見えたのは、醜悪な空気を放つ物体だった。
ひたすら殴り、蹴り、爪をはがし、折れた腕を踏みつけ満足した少年たちは去っていった。

日が暮れかかり彰の上を影がかかった。彰は壁を支えに立ち上がった。
折れた右腕を抑え、よたよたと路地裏から歩き出る。
村人達がまたか…と、彰を汚い物を見るかのような目で見た。

お前らなんか、死んじまえ…

彰は村人達を呪った。
足を奮い動かし、ようやく着いた彰の小さな家の中は荒らされていた。
気にもせずすぐさま汚れた布団の上に倒れ込み、大きく息を吐いた。
目は死人のように濁った色を放っていた。


「あぁ、彰。元気か?」

扉が開いた。彰の家を訪れる人間はこの男しかいない。
彰はうつ伏せのまま動かず、視線だけを横にずらして男を見やった。

「………」
「今日も美しいな、彰は」

美しいもんか。この腫れた顔の、変な方向に曲がった腕の、薄汚れた体の、何が美しいというのだろう。

「………」

「痛そうだな、治してやるよ」
「いい」
「遠慮するな」

折れた腕を持ち上げられ、彰は痛みに呻いた。
だがそれも次第に消えていく。折れた腕は元の通りに完治した。男はただ彰の腕を持ち上げただけだ。

「彰」
「………」
「まだ痛いか?」
「………」
「痛いだろ」
「は?何言ってんだお前、もう痛くねえよ。帰れよ」

彰は男の手を振り払った。軽く腕をまわす。痛くない。
今更こんなことでは驚かない。男は彰が傷つくたびにこうやって治しに来ていた。
どんなマジックを使っているのか、彰は男のことを何も知らない。興味も無い。


「その痛み、覚えておけよ。」
「………何」

急に男の声のトーンがあがった。訝しげに男の方を見る。ざわりと全身の毛が逆立ったように感じた。

「忘れるな。憎め。この世界の全てを」

男は陶酔したようにうっとりと目を閉じていた。


「愛してる、彰。復讐とはお前のためにある言葉だ」

復讐。男の言葉が胸に染み入ってくる。
そう、復讐。

彰は俯いて口端を上げた。

言われなくとも、俺はもうすでにこの世界を怨んでいる。
むろん、お前もだ


彰は布団に顔を押し付け、暗く笑った。



あきゅろす。
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