28-11
間隔をあけて設置された蛍光灯が通路を明るく照らしている。
ディートハルトがどこに向かったかすら掴めていないため、適当にあちこち進むしかなかった。
…って言っても船の中だから時間さえかければ見つかるんだけど。
「お!
空ちゃんじゃん」
誰かに後ろから声をかけられた。
覚えのある声に、振り返らなくてもそれが誰か分かる。
「朝比奈さん!」
「元気?
今日はどうしたの?
組織編成の時はいなかったよね」
「ゼロに頼んで調べていたんです。
この姿が、新しく入った他の団員の人に見えるかどうか」
「そうだった。
その姿、全員が見えるわけじゃなかったね。
結果はどう?」
「あたしの知っている人だけしか見えませんでした」
思い返せば、名前の知らない団員や軍人には気づかれなかった。。
文字通り“あたしの知っている人だけ”
コードギアスの中に出て来る、名前のある人物だけだ。
でも例外はある。
中華連邦で会ったシンクーさん達やロロだ。
あたしの推測が当たっていたら、彼らもコードギアスに出てくる人物になる。
なら、また会えるということだ。
再会に確信を持てて嬉しくなる。
「なにか良いことあった?」
「え」
「笑ってる。
いい笑顔だね。
やっぱりかわいい子には笑った顔が似合っているよ。
超キュート」
朝比奈さんのからかうような軽い口調に恥ずかしくなる。
「あの、あたし人を探してるんですけど!」
「あはは、照れてる照れてる、か〜わいい。
ん? 誰を探してるって?」
「ディートハルト。
この通路を歩いていったはずなんですけどすれ違いませんでしたか?」
心当たりがあるのか、朝比奈さんはすぐに答えてくれた。
「カレンのとこだよ。
機体調整室。
あいつ、他に誰かいないかって聞いてきたから何かカレンに話があるのかも」
「カレンに…?」
話って何だろう?
嫌な胸騒ぎしかしなかった。
機体調整室がどこにあるかを頭にパッと思い浮かべる。
全く逆の方向を進んでいたことに気づいた。
「機体調整室ですね。
ありがとうございます」
お辞儀してから朝比奈さんの横を通って目的地に向かおうとする。
「ねえちょっと」
「なんですか?」
だけど呼び止められた。
どうしてだろう?
急いでいるから今すぐ行きたいのに。
「あいつと仲いいの?」
「よくないです!!」
即答。
これはもう断言できる。
朝比奈さんはどこかツボに入ったのか、ぶふっと吹き出して笑った。
「はははっ!
あいつ、すごい嫌われてやんの!」
「どうして仲いいって思ったんですか?」
「さん無しで呼んでたから。
俺朝比奈さんなのにあいつディートハルトだし」
「それは……まぁ確かにそう思われても仕方ないですね…。
……じゃあ、次から勘違いされないようにさん付けで呼びます」
「勘違いされないように…か。
じゃあ俺は?
俺ならさん無しで呼んでもらえる?」
突然の申し出で言葉に詰まる。
「朝比奈、昇悟。
昇悟って呼んでほしいところだけど朝比奈でも構わないよ」
「しょう…ご。
昇悟?」
名前を呼べば、朝比奈さんは嬉しそうにニカッと笑った。
大人びた雰囲気がグッと子供っぽくなる。
「うん、そうそう。
それと、できれば言葉もくだけて喋ってほしいんだけど。
どうせならもっと仲良くなりたいし。
てか、ごめん、呼び止めて。
俺の用事はそれだけだから」
「はい。
…じゃなかった、うん。
また後でね、昇悟」
急いで通路を進むあたしを、昇悟は満足そうな表情で見送ってくれた。
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