29-4
「残念でしたァ!」
会場に入ったロイドの第一声がそれだ。
全員に注目され、ロイドの後ろにいるのに居心地が悪くなる。
「また仕事が増えちゃったね、スザク君」
あたしは会場に視線を巡らせる。
ルルーシュとスザクの姿は確認できたけど、カレンの姿は見当たらなかった。
ミレイがロイドへと近づいた。
「ロイドさん!
何か…?」
「ミレイちゃんも知ってる人?」
あたしも同じことを思ったが、先に口に出したのはニーナだった。
ロイドが軽い口調で答える。
「婚約者だもん」
婚約者?!
もちろん、驚いたのはあたしだけじゃなかった。
その場にいる全員が驚きの声を上げる。
「で、いいんだよね?」
ロイドの確認の言葉にミレイは曖昧に返事をする。
何か気掛かりでもあるのか、彼女は後ろにいる生徒達に視線を向けた。
「ちょっとちょっと!」
生徒達を掻き分け、リヴァルが前に出る。
「じゃあアンタが……って名前は?」
「ロイド伯爵よ」
「伯爵ぅう!?
…あ、いや、伯爵様?
お二人はどういうご関係で?」
よほどショックなんだろう、リヴァルの声は動揺で震えていた。
「婚約者」
ロイドがキッパリ言い放った現実に、リヴァルは否定するように叫んでその場に崩れ落ちた。
よほどミレイが好きなんだろう、声をかけられる雰囲気じゃなかった。
「それよりスザク君、仕事だよ。
大事なお客様が船でいらっしゃるんでね、お出迎えを。
もちろんランスロットとユーフェミア皇女殿下も一緒に」
ユフィの名前が出た途端、ホールに歓喜の声が沸き上がった。
「ユーフェミア様もですか?!」
反応したのはニーナ。
あたしも気になったため、教えてほしいとロイドに目で訴えかける。
視線がバチッとぶつかり、ロイドはにんまり笑った。
「本国から大事なお客様が式根島にね」
「ダメですよロイドさん。
軍務内容は重要機密なんですから」
「アハ、ごめんついつい」
悪びれもしない声だった。
スザクはナナリーに向き直る。
「ごめん、ナナリー、みんな。
せっかくパーティーを開いてくれたのに…」
「気にしないで下さい。
スザクさんはユーフェミア様の騎士なんですから」
「ええ、私達は大丈夫よ。
ただし、ここに戻ってきたら続きをするからね」
ナナリーとミレイの言葉にスザクはホッとする。
「ありがとう。
じゃあ行ってくるね」
一足先にスザクはホールを出る。
ロイドはミレイ、ニーナ、あたしに向けてヒラヒラと手を振ってからスザクを追いかけた。
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