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28-8
騎士団は今、海の上にいる。
小型の潜水艇と話では聞いていたものの、部屋の数は自分の予想を上回っていた。
騎士団の組織編成が終わり、今あたしはラクシャータさんの部屋にいる。
肉体と霊体が一緒の部屋にいるのって改めて見ても奇妙な光景だ。

「体温、呼吸、脈拍、脳波、全て異常無しです」

ベッドで眠るあたしのそばには褐色の肌の小太りの男性。
ラクシャータさんの助手の人で、彼にはあたしの姿が見えていない。

「ありがとう。
もう下がってもいいわ。
一人にしてちょうだい」

キセルを吸いながらの素っ気ない言葉。
深く考え込んでいるからだろう。
助手の人はそれを知っているのか、嫌な顔をしないで部屋を後にした。

ラクシャータさんはあたしの頭につけている測定機を外す。
脳波を調べるためにつけていたやつだ。
大袈裟に思えるけど、ラクシャータさんにはとっては必要らしい。

「んー…。
これじゃあまるで寝てるみたいねぇ」
「普通だったら異常あるんですか?」
「あるのが当たり前。
あなたがここにいるからね」

ラクシャータさん的には異常があるのが当たり前だけどあたしにはピンと来ない。

「いつもどうやって戻ってるの?
身体からはどうやって抜けだしてる?」

その問いにすぐ答えられず言葉に詰まる。
身体から抜け出すことはできても戻る方法が分からないからだ。

「紅蓮の子から聞いたわよ。
自分自身を把握してないって。
戻り方も分かってないんでしょう?」
「はい。
いつも夢が覚めるような―――強く引っ張られる感じがして戻ってます」
「あなたの意思じゃないってこと?」

言われてみれば確かにそうだ。
自分の意思で戻れたことは一度もない気がする。

「その様子じゃビンゴみたいね。
最初はこんな風にはならなかったんでしょう?」

もちろん。
その意味を込めてあたしは強く頷いた。

「ならそうなった原因を探すこと。
いつそうなったか、そこから考えればより明確になるかも。
原因を知れば自分でその力をコントロールできるはずよ」
いつそうなったかは覚えている。
リフレインの工場を騎士団が破壊した時だ。

きっと何も知らなければ原因を早く掴もうとするだろう。
コントロールできるようにしようって考えるだろう。
だけど、今のあたしはそう思えなかった。

「………このままでいいです」

無意識の呟きは不機嫌に思える淡々とした声だった。





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