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蜘蛛の巣
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蜘蛛の巣




なあ、もし俺がお前の事スキだっていったら、どうする?





茶化すようにそう言うと呆然とした顔を見せた友人に、冗談だと流した。

本当は答えられるのが怖かっただけかもしれない。

勘弁してよ・・・、なんてあの口から言われたらもう二度と顔を合わせられなくなる。

いや、それより俺は多分正気じゃいられないだろう。

拒絶されたら何をしでかすか自分でも分からない。

激情のままにあいつの首を絞めかねない。

なら今はまだこのままでいい。

親友として、誰より近い場所にいられる、まだこのま
までいい。

やっとここまできたのだ。今更全てを無駄にするつもりはない。

ただ少し、欲がでただけだ。

もう少し、この手に堕ちてしまうまで待つつもりだったのに、少し気が急いた。

もしかしたら、触れられるかもしれないと思うと、考える前に口をついて出てしまった言葉。

もし、俺がお前のこと好きだって言ったら・・・?




1. 和哉 side




和哉が加藤修司と初めて出会ったのは大学一年の時。

嘘みたいに出来すぎた男、というのが第一印象だった。

並ぶと見下ろされるくらいの長身と浅黒く健康的な肌、モデルだと言われても納得できそうな整った綺麗で、そして精悍な顔立ち。

入学試験は首席でその後も試験では常に上位に名前が載っていた。

財閥の子息じゃないのかとか、大会社の社長の息子だとかという憶測が飛び交うほど修司という男はどこか浮世離れしていて、人目を引いた。

当然常に皆の注目の的であり、いつも奴の周囲には人だかりが出来ていた。

男らしく精悍な顔の持ち主には女の噂も絶えず、絶倫だという噂さえ立つほどだった。

和哉ももちろん修司の存在は知っていた。

知らない人間など大学内にいなかっただろう。

ただ和哉には別の世界のことで、自分とは無関係な男だと思っていた。

それが必修のクラスが同じで顔を合わせたのをきっかけに何故か修司は和哉に懐き、1ヶ月後には周囲が認める親友になっていた。

いや、最初の頃はどうして修司の隣にあいつがいるのかという好奇の目にさらされた。

男にしては細い体に女みたいな軟弱な顔、大人しくて口下手な上に人見知りが激しい。

たいして目立つタイプでもない和哉とそこにいるだけで人目を引く修司が何故一緒にいるのかと皆が思っているのが手にとるように和哉には分かった。

加えて和哉は人に注目されるのが苦手で、出来れば修司と一緒にはいたくなかった。

最初のころは人に分からないように修司を邪険に扱っていたものだ、だが悪びれることなく無邪気に駆け寄ってくる姿にいつのまにか和哉も心を許していた。

大学でも一緒、休日にも共に過ごすことを和哉が不思議に思っていたのは最初だけで、慣れると修司という人間といる心地よさに浸っていた。

派手な容姿からは想像もつかないほど修司という人間はよく気のつく、穏やかな人間だった。

空気を読むのが上手な人間なのだろう。

大勢と騒ぐのが苦手で、出来れば静かな時間を好む和哉と共に静かな時を過ごしてくれる修司は、いつしか和哉にとって大事な存在になっていった。





大学を卒業してからもそれは変わらなかった。

大手有名企業の経理部門に内定した和哉を追うように修司もまた同じ会社の面接を受け、海外事業部などという所謂エリート職に就職が決まった時は二人で浴びるほど酒を飲んだ。

二人の間にはほかの人間、例えば女が介入することもなく、どこか二人だけの歪な世界だったといえるのかもしれない。

和哉に修司以外の親しい友人はおらず、修司もまた誰より和哉を優先した。

面白い会話が出来るわけでもない、物静かな和哉のどこが良くて一緒にいるのか長い付き合いの中何度も考えた。

だがそう聞くたびに修司は笑って答えるのだ。

「今のままのお前がいいんだ。」






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あきゅろす。
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