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不可解な熱
8


欲しかったのは見返りでも加賀谷自身でもない。
この想いからの解放だった。
「誰も彼も、俺から望むものはこれだけだ・・・・。少しくらいの見てくれと少しの財力、そしてセックスだ・・・・。お前もそうだろう、俺にこうして
抱かれたかったんだろ。」
諒の戒められた両手を掴んで、加賀谷は顔を覗き込んできた。
痛みに顔を引き攣らせた諒を哂って加賀谷は唇を塞いだ。
「んっ・・・、い・・・・やだ・・・。」
「これで満足しただろう、二度と俺を好きだなんて言うな。」
薄っすらと重たい瞼を開けると、どこか辛そうにした加賀谷の顔が見えた。
酷い仕打ちをしているのも、諒を犯しているのも加賀谷なのに、諒は何故か加賀谷の方が傷ついているように見えて胸の痛みを感じた。
明るくて輝いていた加賀谷の暗い内面を初めて見た気がする。
加賀谷の闇など知らない、だが本当にこんな事がしたくてしているわけじゃない・・・・。
そんな気がして諒は堪らなく切なくなった。
「す・・・き・・・、僕は・・・、加賀谷さんが・・・好き・・・。」
嗚咽交じりに呟いた諒に加賀谷の顔がまた険しさを増す。
「お前みたいな人間が、俺を好きだと何故言える・・・。何も知らずにのうのうと生きてきたお前に、俺の何が・・・・。」
俺の何が分かる・・・・!?
血を吐くような心の叫びが諒の胸を締め付ける。
何がここまで加賀谷を追い詰めているのか分からない。
ただ好きだと思う事が加賀谷にとっては罪なのだろうか・・・・。
「俺に愛だの恋だのはいらない。お前もくだらない事を言わないならたまには抱いてやるよ・・・・。」
そう哂って加賀谷は諒の足を自分の肩にかけ、血で濡れた蕾を昂ぶりで攻め立てた。
滑りを帯びた内壁は今加賀谷を飲み込み、きつい締め付けは強い快感を加賀谷にもたらした。
「可愛い後輩だと、思っていたんだがな・・・。」
荒い息を吐きながら精を諒の中に注ぎ、加賀谷はぐったりした諒の髪を撫でた。
加賀谷がそれを諒の中から取り出した時、どろりと血と精液が諒の内股を濡らした。
「これで分かっただろう、俺への気持ちが幻想だったと。」
誰かの机からティッシュの箱を取り、諒の汚れた下半身を清めながら加賀谷はまた暗く哂った。
「か・・・がやさ・・・、僕は・・・・。僕はただあなたが好きで、何も・・・・望んでなんか・・・なかった・・・。」
ショックと痛みに朦朧としながらも諒はそれだけを言うと加賀谷の手を振り払い、身体を起こした。
片思いで別に良かった、告げようと思ったのはこれでこの思いに終止符が打たれると思ったから。
加賀谷の突然の変貌に驚きはしたし、悲しかったが諒は加賀谷を嫌う気持ちにも憎む気持ちにもなれなかった。
行為の途中で加賀谷の暗い闇に触れたせいかもしれない。
明るくて憧れた人にも底のない闇がある事が切なくて、悲しくて。
過去に加賀谷に何があったかは知らない。
だがもう何もかもどうでもいいことのように思えた。
「僕は・・・、何も知りません・・・。でも・・・、僕は本当に加賀谷さんの事が好きで・・・。それだけ伝えたくて・・・、僕は・・・、ただそれだけで。」
顔を覆って体を縮める諒に加賀谷はその腕を取り、引き寄せた。
驚いて顔を上げると、顔を歪めた加賀谷が諒の唇を激しく求めだした。
「んっ・・・、やっ・・・。」
捕まれた腕が加賀谷の力で軋む。
「簡単に好きだなんて口にするんじゃねぇ・・・、一度抱いたくらいで調子に乗るな・・・・。」
加賀谷の歪んだ顔が何故か切なくて、諒は胸が押しつぶされそうになる。
こんな顔をする男だったのかと、今まで知らなかった加賀谷の本質に諒は眩暈を感じた。


そして初めて触れる加賀谷の体温が熱くて、諒は今だけだと加賀谷の心音に耳を傾けた。
不規則に聞こえる鼓動が諒に伝わってくる。
好きだと言うなと、調子に乗るなと言いながらも加賀谷は諒を抱きしめて離さない。
「そんなに俺が好きなら、気が向いた時にまた抱いてやる。」
ニヤリと哂いながら加賀谷は諒の唇を貪った。




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あきゅろす。
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