[携帯モード] [URL送信]

不可解な熱
9



ソファに倒れこんだ諒に圧し掛かり、動けないように腕を頭上で固定しもう片方の手でズボンへと手を伸ばした。

「やっ・・・・・!」

器用にベルトを外し、一気にズボンを下ろされると下半身に寒気を感じて腰が震えた。

「加賀谷さ・・・・、お願い・・・話を聞いて下さい・・・。」

だんだんと浮かぶ涙で視界が滲み、加賀谷の顔がぼやけてきた。

はっきりと顔が見たくて一度ぎゅっと目を閉じ、開いた時には加賀谷の顔が目の前から消えていた。

「んあっ・・・!」

怖くて寒くて縮んでしまっていた諒のペニスに加賀谷の舌が絡まる。

ねっとりとした感触に今は感じたくない快感が走り、諒は思わず加賀谷の髪を掴んだ。

「加賀谷さんっ・・・!お願い、話を聞いてっ。」

加賀谷の唇を離そうと腰を引くが反対に強く腰を掴まれ、逆に突き出すような形になってしまった。

加賀谷は一言も発さずに黙々と諒の下半身に愛撫を落としていく。

酷く怒っているはずなのにその愛撫が優しくて柔らかくて、諒は一層泣きたくなる。

激情に駆られて諒を責めたくせに、傷つけたくはないという加賀谷の心が伝わってきて愛しさが込み上げてきた。

「加賀谷さん・・・・・、僕は加賀谷さんだけが好き。加賀谷さんだけ傍に居てほしい。」

上半身を起こし、蹲る加賀谷の頭をそっと抱き寄せようと手を伸ばした。

「触るな。」

加賀谷の髪に触れる寸前で手を止められ、きつい眼差しが諒を見据えた。

思いつめたような視線に心臓が凍る気がした。

「田村に触れた手で俺に触るな。」

「か・・・がやさ・・・?」

震える手を再度伸ばそうとすると顔を背けられ、その仕草に胸に何かが突き刺さる。

加賀谷が田村に対して心を許していないこと、そして、憎んでいること。

ある程度は知っているつもりだった。

だが最近は穏やかな日々で、なんだかんだと言ってもお互いを認め合っているようにさえ見えていた。

以前田村が諒を好きだと言っていたことが今も加賀谷の胸にはこうも根深く残っていたのだろうか。

今でも田村が諒を加賀谷から奪おうとしていると、そう思っているのだろうか。

それでも、諒はここにいる。

加賀谷を選んで、加賀谷と共に居たいと思ってここにいる。

それは誰に強制されたことでもない、自分が選んで自分で決めたことだ。

加賀谷を、好きだから。愛して、いるから。

諒が、加賀谷と共に居たいと望んだからだ。

「あの野郎には絶対に渡さない、誰にもお前を奪わせない・・・。諒、俺のものだ。」

あの写真を見たせいか、酒を飲んでいたせいか、どこか焦点の合わない視線が諒を捉えた。

空虚な中に暗く、一度はまってしまったら抜け出せないような暗闇が垣間見えて諒はそんな目をさせた自分を今すぐに消し去りたいと思う。

どうして忘れてしまっていたのだろう、加賀谷の中にどうしても消えない人に対する不信感があることを。

絶対の存在である母親と父親に捨てられた記憶はそう簡単には加賀谷を解放したりはしない。

どんなに愛していても、愛されていると信じていても、人は人を簡単に捨てるものだと知っている加賀谷に、何故疑わせるような行動を取ってしまったのだろう。

「僕は・・・、加賀谷さんの傍から、絶対に離れない・・・。絶対に離れない。僕が・・・、僕が傍に居たいから・・・。」

もっと上手く伝えられる方法があったら、いますぐに諒はそれを試すだろう。

心を形にして表せたら、もっと加賀谷を安心させられるのに。

諒は背けられた加賀谷の横顔にそっと手を伸ばし、少し体温の高い加賀谷の肌に添わせた。

夏だというのに冷えた指先が加賀谷の肌に馴染む。

「俺のものか・・・?田村のところに行った
りしないな・・・?・・・ちくしょうっ!」

強く引き寄せられ、背骨が軋むほどに抱き締められて眩暈がした。

加賀谷の背中に腕を回すと、小刻みに震えていることに気付いて諒は固く目を瞑った。

まだ半年、まだたったの半年なのだ。

お互いを分かり合うには短すぎる。

でもそれでも、信じて欲しい。

そして、信じさせて欲しい・・・・。




結局写真は誰から送られてきたものか分からなかった。

加賀谷が帰宅すると郵便受けに入っていたらしい、消印はなし。

誰かが諒を見張り、写真を撮ってわざわざ郵便受けにまで運んできたもののようだ。

江口かとも思ったが加賀谷はそうではないだろうと断言した。

江口には加賀谷より長く付き合っている男がいるらしく、加賀谷とは割り切った付き合いだったという。

江口が諒を嫌ってあんな態度を取っているだけならいい。

だがただ嫌っている相手に対しては執拗すぎると思うのは諒の被害妄想なのだろうか。

何かを含んだような江口の視線が、諒を追い詰めていく。

そして何か得体の知れないものが諒を加賀谷を引き離そうと蠢いているような気がして不安で堪らない。

微かに生じつつある加賀谷との溝も、諒はどうしていいか分からない。

昨夜限界まで求められた身体は悲鳴をあげ、仕事をしていても痛みが走り脂汗が浮かぶ。

顔色の悪い諒を心配して柳瀬が早退をすすめてきたがそれはどうしても嫌だった。

今日中に仕上げなければならない書類を手に取り、諒は使い慣れたパソコンを立ち上げた。

「・・・・・・!」

メールの着信を知らせる画面が目に飛び込んできて諒は咄嗟に顔を上げ、江口の座るデスクに目をやった。

だが外出しているのかそこは空席になっており、ホッと胸を撫で下ろしメールを開いた。

「・・・なに・・・、これ。」

添付されていた画像を開くと、江口と加賀谷がベッドの上で裸で睦みあう姿が映っていた。







[*前へ][次へ#]

9/32ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!