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不可解な熱
6


糸が張ったような緊張した時間が二人の間に流れた。
加賀谷は驚いて目を瞠ったまま固まって、ただ諒の顔を凝視していた。
居たたまれなさに諒は唇を噛み締める。
言ってしまった言葉を取り消そうにも金縛りにあったように動く事も
声を発する事も出来ずに、諒は溢れ出てくる涙を必死に堪えた。
言ってもどうしようもない事だと分かっていながら零れた想いに諒は溺れそうだと思った。
タカが外れたように涙を流す諒に加賀谷はふっと息を吐いて苦笑した。
いつもの優しい笑みではなく、自嘲気味な歪んだ笑み。
どこか雰囲気の変わった加賀谷に諒は一瞬後ず去った。
「お前、俺がどうゆう男か知っててそんな事言ってんの?それとも俺が男もイケルって知ってて自分も抱いて貰えるとでも思った?」
俯いたまま諒は加賀谷の言葉を反芻した。
加賀谷が男も範囲内だとはもちろん知らなかった。
だが加賀谷の言葉を理解するにつれ、あまりの惨めさと恥ずかしさに諒は顔を上げる事も出来なかった。
相手にしてもらえると思ったのかと言う加賀谷の残酷な言葉が諒を引き裂く。
こんな自分が加賀谷の相手になるなど、抱いてもらいたいなど滑稽な事を思っていたわけではない。
ただ振られて避けられればここを辞めて新たに出発するきっかけになると思った。
「高田・・・・・・、悪いけどお前を相手にするほど俺は飢えてない。」
顔を上げられずにいる諒の傍まで来て、加賀谷はその顎を掴んだ。
「だが、お情けは与えてやってもいいぜ?」
涙で濡れた諒の目に、歪んだ笑みを浮かべた加賀谷が揺らいで映った。



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あきゅろす。
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