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不可解な熱
4




頭が沸騰して蒸発しそうだ。

上に乗った諒のしなやかで華奢な姿態。

そして快感に身を任せた淫猥な顔。

酔っているからこその媚態であるが、たまらない刺激を加賀谷にもたらした。

「あっ・・、ああっ・・・・・。」

自ら腰を振り、快感を追い求める諒の姿など見たこともない。

「誠人さん・・・、気持ちい・・・?気持ち・・・いい?」

「くっ・・・・、ああ、気持ちいい・・・・・。」

上から見下ろす諒の顔に手を伸ばし、その頬を撫でると嬉しそうに笑みを浮かべた。

愛しすぎて頭がおかしくなりそうだと思う。

一旦止めた動きを諒が再開するともう何も考えられなくなり、加賀谷は快感の波に意識を任せた。

「あっ・・・、んっ・・・・。」

びくびくと諒のペニスが震えだして、限界を知った加賀谷は諒の身体を床に押し倒して激しく攻め立てる。

「やっ、ああああああっ・・・・!」

諒が身体を反らし、勢いよく白濁したものを吐き出し、それが諒と加賀谷の腹や胸に飛び散った。

内壁が蠢くように伸縮し、それに締め付けられた加賀谷自身もまた諒の最奥に劣情を吐き出した。

「ふ・・・、や・・・。」

奥に当たるのか身体を震わせた諒を力強く抱き締め、二三度腰を揺らす。

その度にきゅっと奥が締め付けられる。

「はあ・・・・。」

その感触にまた硬さを取り戻していく自分の浅ましさに加賀谷は苦笑しながらも

諒の腰を掴み、引き寄せた。

「んあっ・・・、やぁ・・・・・。」

まだ痙攣している諒の身体に赤い証を残し、首筋に歯を立てる。

ビクリと跳ねた腰を押さえつけて昂ぶった自身をまた深く突き立てた。

「床じゃ背中が痛いだろ・・・?ベッドに移 動するか?」

半ば朦朧とした諒の耳にそう囁くと、背中に腕が回される。

「や・・・、このまま・・・・。んっ。」

動いてもいないのに自分の内壁が蠢いて中の加賀谷を感じるのか諒のペニスが硬さを少し取り戻した。

「エロいな、お前・・・・。気持ちいいのか?どうして欲しい?」

「やっ・・・、動いて・・・、動いてぇ・・。」

背中に回されていた腕を外し、加賀谷は首に回させた。

抱きついてきた体を起こし、胡坐をかいた上に座らせる。

結合が深まるのか諒の眉間に皺がよった。

「深・・。はぁ・・・・。」

そのまま動かない加賀谷に焦れたのか、自分から腰を揺らし始め、諒の蕾から溢れたものが床を濡らす。

「あっ・・・、あああっ。」

荒い吐息が加賀谷の首筋にかかり、加賀谷の吐息もまた諒の額にかかる。

そんな二人の吐息を交わらせるかのように自然と唇を合わせた。

「好き、好き・・・。あっ・・・愛してる・・・。」

知らず諒が洩らした言葉に加賀谷の心臓が手で撫でられたようにぞわりと震え、一瞬にして血が逆流した。

「諒っ・・・!」

激情のまま諒の腰を押さえつけて自身を叩きつける。

一気に膨れ上がった想いを諒にぶつけるように求めた。

「あああっ・・・・、誠人さんっ!」

胸が掴まれる。

愛しさに息が止まりそうになる。

そして愛しいあまりに喰い殺してしまいたくなる。

自分の一体どこにこれほどの情熱があったのか、昔を知る人間が見たらさぞ驚くだろう。

加賀谷自身でさえ、時々これが夢なんじゃないかと思う事がある。

夢で見る諒はいつも優しく、加賀谷を愛してくれる。

そして朝目が覚めると全て自分の欲求が見せた夢なんじゃないかと。怖くなる。

隣で眠る諒の姿を認めてなお、まだ夢を見ているんじゃないかと思い、触れて、身体を繋げてやっと安心する。

昔見た悪夢はもう見ない。

だがその代わりに幸せな夢を見るのに、それが夢なのか現実なのか分からず、夢だったらと思うと恐ろしくなる。

諒を信じられないのではなく、自分が信じられないのだ。

自分にこんな幸運が訪れるはずなどない。

人を愛し、愛される幸運など。

だが実際その幸運は訪れ、手にした瞬間から今度は手離す恐怖を知った。

もっと自分は強い人間だと思っていたが、実際は小さな子供の頃から何も変わっていない。

大事なものほどこの手を離れて行く。

父親も、母親も。

だがもう指を銜えて泣いているばかりの子供じゃない。

眠る諒の髪をそっと撫で、加賀谷もまたその隣に身体を横たえた。

悪夢を消し去ってくれた存在を抱き締めて。




翌日、二日酔いでぐったりとした諒をベッドに寝かせたまま加賀谷は深く息を吐いた。

「諒、いいか。よく聞け、お前俺がいない時には絶対に酒を飲むな。絶対だ。」

ベッドの横に仁王立ちしたままそう言う加賀谷を不思議そうに見上げる顔に昨夜のような妖艶さも淫猥さもない。

何も知らない子供のような無垢な表情に加賀谷は頭痛を感じる。

「お前があんなに酒で乱れるとは思わなかった。だからいいか、絶対に俺以外と酒を飲むな・・・。」

「僕お酒そんなに弱くないのに・・・・。」

確かに今まで諒が飲んだのを見たことがある。

今まであんなに酔って乱れたことなど一度もない。

昨夜は諒の許容範囲を超えていたのだろう。

「僕、何か変なことしちゃったの?」

加賀谷の様子に顔を青褪めて窺う諒に、まさかと嫌な予感がした。

「お前覚えてないのか?昨夜のこと・・・・。」

「え?何したの?・・・柳瀬さん達が帰った後から記憶が・・・。」

「・・・・、そうか。昨日はすごかったぞ、あんなに積極的なお前は俺も初めて見た。なかなかいやらしくて良かったがな。」

「う・・・・嘘っ。」

青褪めた顔からいっぺんして真っ赤に染まった頬にニヤニヤと加賀谷は笑い、耳元で囁いた。

「昨夜はお前に襲われたんだぞ、俺を押し倒して・・・・。」

全く覚えていないのか加賀谷の言葉に目を丸くした諒に噴き出して、加賀谷は起き上がろうとする身体をベッドに沈めた。

「たまにはああして襲ってもらうのもいいな、だがそれは俺だけだ。他の人間の前で酔っ払ってあんな事したらただじゃおかない・・・・。」

何事かを抗議しようとする諒の唇を塞ぎ、額にも唇を落とす。

そのまま寝室を出ようとする加賀谷の耳に諒のひとり言が聞こえた。

「もうお酒なんて飲まない・・・、もう絶対飲まない・・・・。」

ぶつぶつとそう繰り返す諒に苦笑しながら、たまには飲ませても構わないと身勝手な事を一人加賀谷は考えた。

もちろん、二人きりの時だけに。






終わり




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あきゅろす。
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