不可解な熱
5
田村と柳瀬が西川を連れてどこかに消えた後、加賀谷が諒を抱きかかえるように部屋に連れて行ってくれた。
震えが止まらない諒を根気強く宥め、優しく抱き締めてくれる。
先ほどまでの激昂した様子は全くなく、今はただ諒を落ち着かせることに集中しているようだった。
しばらくして諒の震えが止まると、浴室に連れて行き、温かなお湯に浸からせてくれた。
加賀谷に抱きかかえられながら浴槽に浸かっていると、やっと気持ちが落ち着いてくる。
「加賀谷さん・・・、僕・・・・。」
「何も言わなくていい、お前のせいじゃない。俺が傍にいればあんな怖い思いをさせずにすんだんだ。」
後ろから包み込むように諒を抱き寄せ、濡れた髪に口付けを落とす。
「ちょうど東京に着いた時に柳瀬さんから電話を受けたんだ、お前が危ないかもしれないって。それでタクシーを飛ばして帰って来た。間に合って良かった・・・・・。」
最後溜息を吐きながらそう言った加賀谷が、どれほど心配してくれたのか分かり、諒はまた泣きそうになるのを堪えた。
「ど・・・して、戻ってきたの・・・・?仕事は・・・。」
「昼間田村さんから電話があったんだ、朝の電車での事を聞いて、その後お前から今日みんなで飲みに出かけるとメールがあって。なんだか嫌な予感がしたんだ。吐き気がするくらい嫌な予感がして、とにかく一旦帰ろうと思ってな。」
予感がしただけでこうして仕事の最中3時間の距離を戻ってきてくれたのだと知って、諒は加賀谷を振り返り、ぎゅっと首に抱きついた。
先ほどまで怖くて堪らなくて震えていたのに、今は胸の中が熱くて、何かがあふれ出そうになる。
ちゃぷんとお湯が跳ね、加賀谷が諒の身体を強く抱き寄せた。
「いいか?あれはお前のせいじゃない、もうあんな事は起こらないから心配するな。お前は俺がちゃんと守る。二度とあんな目 には合わせない。」
耳に唇を当てて低く囁かれると、ぞくりとしたものが諒の背中を走る。
守ると言われた事が嬉しくて、歓喜に似た思いが諒を高揚させた。
どうして自分が欲しいと思う言葉を言ってくれるのだろう。
「僕、寂しかった・・・。たった一週間なのに、耐えられそうになかったよ・・・・。好き、僕加賀谷さんが好きです・・・・・。」
そう言って、諒はおずおずと唇をそっと加賀谷の唇に触れさせた。
途端に加賀谷が諒の頭を押さえ、激しく唇を貪り始める。
舌と舌を絡ませて唾液が混ざり合うような口付けに諒の目元が赤く染まる。
それを嬉しそうに眺めて、加賀谷は唇を離した。
離れた唇が寂しくて、諒は強請るような視線を加賀谷へと向ける。
「僕・・・・、今、加賀谷さんに、抱かれたい・・・です・・・。」
肌と肌ががぶつかり合う音が浴室に木霊す。
普段より鮮明に聞こえる音に諒は一層己が興奮していることに気づいた。
「はっ・・・・、んぁっ・・・!」
立ったまま腰を抱えられ、壁に背中を押し付けられて諒は加賀谷を受け入れていた。
きつい体勢が苦しくて、体に力がこもると一瞬加賀谷が呻いた。
身体に流れる雫が、汗なのか水なのかももう分からない。
「ああっ・・・・・。」
抉るように内壁を押し上げた昂ぶりに目の奥がちかちかと火花を散らす。
二人の荒い息が混ざり合い、溶けていくような気がした。
「んっ・・・・、え・・・?」
加賀谷が身を引き、中の怒張を取り出すと、諒の身体を反転させる。
そして腰をぐっと掴まれ、蕾にまた熱い塊を押し付けられると、期待に内壁が蠢く。
浴室の壁に手をついたまま後ろから穿たれ、深い挿入に諒の身体がびくびくと跳ねた。
「あ、ああっ。」
激しく繰り返される律動に揺り動かされ、諒は一気に果てた。
「くっ・・・・・。」
中が伸縮するように蠢くと、それに刺激された加賀谷もまた諒の奥に熱い劣情を放つ。
「はあ・・・・、んっ・・・・。」
諒の顔を掴み、後ろを向かせると加賀谷が深い口付けを落としてくる。
それを受け入れながら諒は加賀谷の舌に己の舌を絡ませた。
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