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不可解な熱
2




家に戻り、ゆったりとお風呂に浸かると諒は息を吐いた。

二人で住みだしてふた月が過ぎたが、親や兄達にまだ何も言っていないことが諒には少し気がかりだった。

一緒に住むように言っていた兄の言葉を振り切って一人暮らしを選んだのに、その舌の根も乾かぬうちに加賀谷と住みだしたのを言うのがどこか憚られた。

両親はともかく、兄はいい顔をしないだろう。

裏切られたと思うかもしれない、殊更諒を可愛がっている一番上の兄に申し訳ないような気がして、今少し距離を置いてしまっている。

いつか言わなければならないだろう。

加賀谷との同居のことも、二人の関係のことも。

それを考えると思考が悪いほうへと向かってしまうから、なるべく考えないようにしていたが、加賀谷自身がまだ家族に何も言っていない諒に不安を感じているのも知っている。

今度実家に帰った時に、きちんと話をしよう。

そう決めて諒は風呂から上がった。

リビングに入るとビール缶を片手にテレビを眺めている加賀谷が振り返り、まだ髪が濡れている諒の頭を見て顔を顰める。

「ちゃんと乾かしてこいっていつも言ってるだろ、まだ夜は冷える。」

ソファに座る自分の前に諒を座らせ、首にかけていたタオルで頭をがしがしとこすり付ける。

こういうところに細かい加賀谷に対して、諒は面倒くさくてすぐに簡単に済ませてしまう。

髪に残っていた水分を吸い取り重くなったタオルを洗面所に持っていき、戻って来た時には手にドライヤーを持っている。

それで綺麗に乾かした髪に納得したように撫で、ふっと苦笑を漏らす。

「お前几帳面そうに見えるのに、意外と面倒くさがりだよな。そろそろ髪切るか?」

伸びてうっとおしくなっている髪に指を通し、柔らかな髪をもてあそぶ。

「そうですね、暑くなってくるし。短くしようかな。」

「じゃあ、明日は美容室だ。」

週休二日の休みに自分の都合ばかりなのが悪くて、諒はゆるく頭を振った。

「一人で行けますから、加賀谷さんは明日好きに過ごして下さい。」

そう言いながら後ろにいる加賀谷を仰ぎ見ると、むっとした顔をされた。

「冗談だろ、せっかくの休みになんで別行動しなきゃいけない。どうせ一時間くらいですむんだ。」

「でも・・・・。」

「いいから、後ろで弄られてるお前を眺めててやる。」

それはそれで嫌だと諒が顔を顰めると、楽しそうに加賀谷は笑う。

からかわれている気がして口を尖らせると、加賀谷が身体を屈めてそこに一瞬の口付けを落とした。

顔を真っ赤にした諒をソファに抱き上げ、膝に乗せると深い口付けを交わす。

舌が掬われ、絡めとられて息が上がっていく。

甘噛みされると舌が痺れるような感覚がした。

キスだけで体が震え、期待に心臓が躍る。

「ああ、その顔好きだな・・・・。無防備で可愛い・・・・。」

そう言われると恥ずかしくて顔を背ける諒の顎を掴み、また舌を絡ませる。

「・・・ふ・・・、あ・・・。」

加賀谷の熱い舌が口から顎、首筋を辿って降りていくと、ぞくりと肌が粟立った。

二人で暮らしだしてからの加賀谷は酷く優しい。

優しくて時々怖くなる。

加賀谷なしで生きられないほどになってしまうのが、恐ろしい。

「どうした?諒、待てないのか?」

着ていたパジャマの釦が一つずつ外される動作がやけにゆっくりで、居た堪れなさに諒は腰を無意識に動かした。

「そ・・・、そんなんじゃ・・・っあ。」

否定しながらも肌に触れてきた手が胸を掠ると堪らずに声が上がる。

優しく動くくせに、きちんと触れてくれない手にもどかしさを感じて、諒は息を深く吐き出した。

「我慢するな、どうして欲しいか言ってみろ。触って欲しいか?それとも舐めて欲しいか?」

意地悪く囁く加賀谷のシャツをきつく掴んで、涙で潤んだ目で訴えかける。

だが無情にも加賀谷の手は触れて欲しいところを敢えて外しながら肌に触れる。

「や・・・、い・・・じわるっ・・・。」

「言わないと分からないだろ?ほら、言ってみろよ。俺にどうして欲しい?」

好色な顔で笑う加賀谷を睨みつけるが、涙目ではかえって逆効果のようだった。

頭を強く掴まれ、激しく唇を求めながら加賀谷は自分を抑えるように肩で息を吐く。

「言ってくれ・・・・。お前の口から聞きたい。」

「んっ・・・、はあ・・・っ。」

露わになった肩に歯を立てられ、それさえも快感を呼んでしまう。

ほんの少し触れられただけで感じてしまうのはきっと加賀谷だから。

見詰められただけで身体が震えるし、キスだけで簡単に陥落する。

「し・・・て・・・。触って・・・、下さい・・・。」

堪えきれずに泣いて言うと、加賀谷が一瞬目を細める。

狙いを定めるように。どこから食い尽くそうとするように。

身体がソファに押し付けられ、上に乗り上げてきた加賀谷がシャツを脱ぐ。

荒々しくシャツを脱ぐその動作をする時、諒はいつも見惚れてしまう。

綺麗に割れたお腹と、固い胸に薄っすらに浮かんだ汗が、自分を求めてのことだと思えるこの瞬間が好きだった。

そのまま着ていたパジャマを全て剥ぎ取られ、全裸になった諒の体をまるで確認するように手で弄る。

指先が諒の体中を滑っていく。

「は・・・・ぁ・・・。」

そして両頬を大きな手のひらで包み込まれると、どうしてだか大事にされている、愛されていると実感する。

そして余す所なく加賀谷の愛撫を受け、とろとろにされたところで加賀谷がゆっくりと挿入してくると圧迫感と不思議な充足感で満たされる。

「誠人さ・・・、誠人さんっ・・・。」

無意識に名前を呼ぶと中の加賀谷が一層重量を増していく。

苦しくて大きく口を開けて喘ぐとそこに加賀谷の舌が侵入してきて、諒の舌を掬い上げる。

互いの熱い吐息を感じながら果てる時、「諒・・・。」と切なげな加賀谷の声が遠くに響いた。





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あきゅろす。
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