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不可解な熱
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(田村さん視点)…本当はこんな人






「ねえ、なんだかぼんやりしてるのね。何か気になることでもあるの?」

情事の後の気だるさを引き摺ったまま女が肩に凭れかかる。

田村は煙草に火をつけたまま女を押しやった。

「ちょっと・・・、最近変よ。どうしたの?」

巻いた長い髪を手で弄びながら女は田村の耳に唇を寄せた。

化粧の香りときつい香水の匂いが女から漂い、それに田村は眉を顰める。

豊満な胸に細い腰、美しく装った顔に余程自信があるのか、女は自分を田村の一番だと思っているようだ。

ベッドの端に腰を掛けてあらぬ方向を見詰める田村の意識を戻したいのか、下半身を密着させてくる。

「帰れ、もう用は済んだ。」

田村の低い声に女は目を軽く瞠り、口を歪ませる。

「呼び出したのは貴方よ?終わったら放りだすなんて酷いじゃない・・・。」

「煩いな・・・、帰れと言っているんだ。それともこれで最後にするか?」

女との付き合いは長い。

田村の異変を嗅ぎ取って女はそそくさと帰り支度を始めた。

これ以上食い下がっても捨てられるだけだと分かっているのだ。

「何があったか知らないけど、まさか他に好きな女でも出来たんじゃないでしょうね・・・。」

服を着ながらさり気無さを装い聞いてくる女の声に、田村の脳裏に浮かぶ顔。

くっと鼻を鳴らして田村は女から目を逸らした。

「貴方に限って本気っていうのはないでしょう?」

帰り支度の終わった女の腕を取り、田村は玄関まで女を引っ張っていく。

軽く抵抗しながらも女は素直に田村に従った。

「慎一さん・・・次はいつ会える?」

玄関の扉を開き、女を押しやる田村に縋るように声を掛ける。

「・・・・・。」

何も言わずに女を玄関から追い出し、田村は扉を閉めた。

「・・・ほんとに、酷い男」

女の小さな呟きが田村に響く事はない。

酷い男。

冷たくて優しい言葉一つかけてもくれない。

でも毒のように田村は女の身体に染み付き、決して忘れさせてはくれない。

どんなに酷い扱いを受けようと、声を聞けば会いたくなり、触られると何も考えられなくなる。

田村と出会ってからもう何度目になるか分からない涙を、女はまた零した。







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