不可解な熱
3
携帯が繋がらないのは高田を抱いてから初めてだった。
加賀谷は苛々する気持ちをなんとか宥めて数回目に通話ボタンを押した。
だがすぐに無機質なアナウンスが流れ、舌打ちしながら携帯を壁に投げつけた。
どこに行っているんだ・・・・。
他の男と居るんじゃないか、優しくされて誰かにすがり付いているんじゃないか。
そう思うだけでぐつぐつと頭が沸騰する。
暗い想像に囚われ、嫌な方にばかり考えが向かう。
高田の自宅に電話をした時、母親らしき女性に伝言は残した。
だがそれを無視している可能性に気づいて加賀谷は手元の酒を煽った。
「くそっ・・・・。」
ソファに凭れかかり、目を閉じる。
すぐに脳裏に浮かぶ男の姿を消し去るように目を開き、また酒を煽る。
穢したくないと思っていた存在を自分の手で穢してからはタカが外れたように高田を求める。
身体に触れている時だけは実感できる存在が今居ないことがここまで自分を追い詰めていることに加賀谷は焦りを感じた。
捨てられて傷ついた過去をどうしても思い出してしまい、暗く沈んでいく思考に苛立つ。
もう誰も信じはしない。
誰にも自分の領域を侵させはしない。
そう思いながら生きてきた筈が、たった一人のつまらない男のせいでそれが崩れそうな予感。
そんな予感が加賀谷をなお一層頑なにさせていった。
酒が頭をどんどん鈍くしていく。
連絡の取れない苛立ちから加賀谷は強い酒を味わいもせず飲み干す。
どこに行っているんだ。
誰とどこにいる。
今こうしている間にもあいつが誰かと一緒にいる姿が脳裏に浮かんで加賀谷は眉間の皺を深くした。
苛々する。
遊び相手だと割り切っているはずの高田に対してこうも執着している自分に呆れる。
抱くとあどけない顔が淫猥な色を持ち、小さな身体が震えるあの姿は自分だけのものだと加賀谷は自分に言い聞かせる。
他の人間があの身体に触れ、あの温もりに包まれるのかと想像しただけで吐き気がする。
冗談じゃない。
あれは、俺の物だ。
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