[携帯モード] [URL送信]

不可解な熱
2


諒が勤めるのは大手の商社だ。
そこで諒は5年勤めた。
高校しか出ていない諒に親戚が与えてくれた職場。
縁故だツテだと言われても諒はこの職場をどうしても放り出し たくはなかった。
その原因は今日も女性達の華やかな集団の中心に居た。
3つ先輩の加賀谷誠人の姿を認めただけで諒の体温は上がる。
恋や愛に疎く、奥手の諒にとっては初恋と言っても過言ではない。
加賀谷の傍はいつも華やいでいて光に満ち溢れている。
自分にはない輝いた人生。
明るくてそつがない加賀谷はいつも人の中心にいる存在だった。
甘くて優しげな風貌に逞しく引き締まった体躯。明るい髪色は加賀谷の容姿を更に引き立たせていた。
ソフトな低音の声は滲みるように体を伝う。
笑うと可愛くなると女性達の視線を一身に集める加賀谷を女性と同じように見詰めている事に気付いたのはいつ頃だろう。
気がつけば目が、神経の全てが加賀谷を追いかけていた。
憧れなのか恋なのか分からないまま時間だけが過ぎ、そしてふとしたきっかけでこの気持ちが恋なのだと自覚した。
ひと月前、休日を使って自宅で仕上げようと思っていた書類を会社に忘れ、夜取りに戻った時見てしまったのだ。
加賀谷が秘書課の美人秘書と夜の応接間で繰り広げていた情事。
額に汗を浮かべて一心不乱に女の体を貪る加賀谷の姿に諒は見惚れた。
そして加賀谷に求められている女性に嫉妬した。
苦しいほどに息が詰まり、堪らずに走ってその場を後にした。
自分にはない輝きを持つ加賀谷に対する憧れを、はっきりと恋だと自覚した瞬間だった。




[*前へ][次へ#]

2/26ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!