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不可解な熱
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駄目な人間と、何をしても上手くこなす人間がいる。
毎日を鬱々と過ごす人間もいれば、毎日が輝いている 人間もいる。
高田諒は重くなっていく気持ちを何とか持ちこたえて ノートパソコンへと向き直った。
諒は間違いなく人から見れば駄目な人間で、毎日を鬱々 と過ごす部類に分類されるだろう。
中学で止まった身長は人より頭一つ分小さく、顔もどこに でもいる普通の顔。十人並みなだけまだましだろう。
黒髪は重たく目元にかかり、いつも下を向いているせいで 暗い雰囲気を纏わりつかせている。
ただ吹き出物一つないすべすべの肌と淡い色の唇だけが異様 に目立ち、まるでそこだけ女のようだと言われる。
友人も少なく、人と接するのが大の苦手。
声を掛けられるとどうしても萎縮してまともに返事をかえす 事さえ出来ない小心者。
このまま自分の人生は終わるのだろうと諒は溜め息を飲み込む。
趣味も特技も特にない自分には良い縁談もこれから先有り得な いだろうし。
諒は人の少なくなった昼下がりのフロアを見渡した。
皆連れ立って昼食に出ている。
営業部の端にある事務職の席で、諒はパソコンの中の書類を 保存し、引き出しに入れてあった弁当を取り出した。
今でも母親の作ってくれる弁当を持ってきているのは諒くらい のものだろう。
重たい気持ちのまま、諒は弁当を持ち食堂へと向かった。



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