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恋狂い
15


搬送された病院で手術が行われ、柊が着いた時にはまだ執刀中だった。
手術室前の廊下で、柊は現実を受け入れることが出来ないでいた。
「すみませんっ・・・・!俺のせいです、俺が目を離したからっ・・・。」
大田が柊の前に土下座をして何度も謝っているのも柊の耳には届かない。
暗い廊下に一人座っているかのような錯覚。
柊はただ手術室の扉を見詰めた。
「真澄は・・・・、俺からそんなに逃げたかったのか。俺に向けた笑顔は嘘だった?俺を・・・・やはり許せなかったのか・・・・。」
ぶつぶつと呟く柊を座間は痛ましげに見詰めるしか出来なかった。
掛ける言葉さえ見つからない。
「あれは死ぬのか・・・・、俺を、捨てるのか・・・・。明日、二人で届けを出しに行こうと約束したんだ・・・・。なのに、あれは俺を捨てるのか・・・。」
柊の呟きが冷たい廊下に響き渡る。
消毒液の匂いが現実を柊に知らせる。


ただ・・・、愛しているんだ・・・・。
愛しているから全てが欲しかった。
例え手の届かない花だとしても、お前が欲しかった。
それが・・・・・、お前を追い詰めた・・・・。


大田はただ泣き崩れ、座間はひたすら祈った。
時間が一向に進まない気がする。
時計の針の音が静かに柊に重く圧し掛かる。
「あ・・・・、社長!手術が終わったようです・・・。」
座間が柊の肩を揺さぶる。
ハッと柊が扉を見詰めると中から白いシーツに包まれた真澄が運ばれてきた。
「真澄・・・・・・・。」
白い顔は息をしているのかさえ分からない。
「医師・・・・、真澄さんは。」
病室へと運ばれる真澄に縋るように付き添う柊を大田に任せ、座間は医師を捕まえた。
医師は暗い顔で座間を見詰めた。
「今晩が峠です。本気で、死ぬつもりだったのでしょう・・・・・。」
医師の言葉に座間は目を瞑った。
大量の出血に真澄自身の体力が追いつかないのだろう。
ましてやつい数ヶ月前には栄養失調で通院をしていたくらいだ。
もしかしたら・・・・・。
真澄は柊の前から消えてしまうかもしれない。
座間はその時を思ってゾッと体を震わせた。





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あきゅろす。
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