春のかたみ
六
■ ■ ■
椀も空き、茶菓子もなくなると、三人は意外なほどあっさり池田屋を後にして行った。
しかも何故か不知火さんに至っては帰り際に『またな』などと挨拶までされた。
随分と気に入られたものである。
結局、最後まで相手をしてしまったため、私は店に持ち帰る荷物を纏めて池田屋を後にした。
本来なら明日、池田屋の手代さんが水月堂まで届けてくれる手筈だったのだが。
帰り際、池田屋の主人には丁寧に頭を下げられた。よっぽどあの三人組の来店が頭痛の種となっていたらしい。
しかし私はその丁寧な謝辞を辞退した。
礼を受け取る資格等ない。
この数日後、私達はこの宿を血の海へと変えてしまうのだから。
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